鎖錠の楼閣

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    【余命一月の勇者様】第20話 天気雨〈2〉【オリジナル小説】

    ■タイトル
    余命一月の勇者様

    ■あらすじ
    「やりたい事が三つ有るんだ」……余命一月と宣告された少年は、相棒のちょっぴりおバカな少年と旅に出る。

    ▼この作品は【鎖錠の楼閣】、【小説家になろう】、【ハーメルン】、【カクヨム】、【Enty】の五ヶ所で多重投稿されております。
    ▼表紙を断さんに描いて頂きました!

    ■キーワード
    異世界 ファンタジー 冒険 ライトノベル 男主人公 コメディ 暴力描写有り

    ■第20話
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    第20話 天気雨〈2〉


    「ウオオオオッッ!!」

     物凄い勢いで駆け込んで来るマナカにトウメは瞠目したが、ミコトが既に臨戦態勢に入っているのを見て、「バカが! この人数に勝てると思ってるのか!?」と大剣を抜き放つ。「野郎共! こいつらをぶち殺せ!」
    「殺せェェェェッッ!!」雄叫びを上げながら盗賊団が全員武器を構え、二人のバカな少年に襲い掛かる。
    「ゼァッ!」気合いを込めた声を上げつつ、相手が武器を構える前に片手剣の鞘で顔を殴りつけるミコト。「シッ!」と口から小さく空気を漏らし、その倒れた相手の先にいる男の脇腹を蹴りつける。
    「オオオオッッ!!」喚声を上げながら大剣の腹で団員を四人同時に薙ぎ倒し、力だけで彼方に吹き飛ばすマナカ。「アアアアッッ!!」止まらない喚声と共に、男達を吹き飛ばした遠心力をそのまま活かし、近づいて来ていた女の頭に真上から大剣の腹を叩きつけ、昏倒させる。
    「死ねェェェェッッ!!」殺意の声と共に鎌を持って襲い掛かってくる男に対し、ミコトは片手剣の腹で鎌の刃を受け止め、受け止めた瞬間股間を蹴り上げて、悶絶した瞬間を目掛けて顔を殴りつけると、男は泡を噴いて立てなくなった。
    「キエエエエッッ!!」気合いの声を上げながら小剣を突き込まれ、マナカの脇腹から鮮血が舞うも、痛みを感じていないのか、振り回した大剣の腹で男の顔面を殴り飛ばし、遥か彼方までぶっ飛ばす。
     襲い掛かる盗賊団を次から次へと薙ぎ倒していく二人に、トウメは己の目を疑った。盗賊団の戦闘能力の練度は低くない。二人の強さが桁外れなのだと気づくのに、そう時間は掛からなかった。
     どれだけ攻撃を受けても、傷を負っても、血塗れになっても怯まない二人の青年に、やがて盗賊団に恐怖が刻まれていく。鬼神のように、ひたすら暴力を振り撒く二人の男は、数で勝る利など全く無意味である事を思い知らせるように、襲い掛かる全てを薙ぎ倒していく。
     そうして十分程の嵐が止んだかと思った時には、頭領のトウメだけが立っている惨状が広がっていた。倒れている者と、恐怖に駆られて逃げ出した者、そしてトウメ。二十人にも上る盗賊団が、たった二人の男の手により、今壊滅の危機に瀕していた。
    「冗談だろ……?」
     その地獄絵図を作りだした二人の男は、今もそこに立っている。全身を己の血で汚した二人は、敵意しか感じさせない目つきで、トウメを睨み据えていた。
    「ミコト。親玉が残ってる」
    「“残したんだ”。謝る機会は、必要だからな」
    「倒しちゃダメなのか?」
    「まだダメだ」
    「そうか」
     二人の男の会話はまるで意味不明だった。トウメは憎悪と恐怖と困惑で頭の中がグチャグチャになり、自分でも訳の分からない行動に出てしまう。
    「こ、これを返して欲しいんだろ!? 返すからよ、勘弁してくれよ!」と言ってトウメが差し出したのは、火の花だった。「これが欲しいんだろ!?」
    「それはレンと交換したからいらねえよ。俺がお前に求めてるのは、レンへの謝罪だ」ペッと血反吐を吐き出し、口元を拭うミコト。「頑張っているレンを蹴り飛ばした事を謝れと言ってるんだ」
    「しょ、正気かお前!? 魔族のクソアマに謝るとか、お前頭おかしいのか!? そいつは俺達人族の敵なんだぜ!?」レンを指差して喚き散らすトウメ。「そいつに似た女なら紹介してやる! だから――」
    「――マナカ」「あぁ、倒そう」
     二人が同時に動いた瞬間、トウメも腹を括り、「ふざけやがってクソガキ共がァ!!」と大剣を振り薙ぐも、二人は容易くそれを回避し、二人同時に拳をトウメの顔面に叩き込んだ。「――プァッ」顔を潰されて倒れ込んだトウメは、そのまま伸びてしまった。
     静かになった平原で、二人は互いの姿を見て、苦笑を浮かべ合う。
    「ひでえ恰好だな、マナカ」「ミコトにだけは言われたくねーよ!」
     軽口を叩けたのはそこまでで、ミコトは体勢を崩して倒れ込んでしまい、それをマナカが咄嗟に腕を引っ張って起こし、肩を貸してレンの元へ向かう。
     レンはその姿を泣きながら見つめていた。
    「ごめんな、レン」マナカに肩を貸して貰いながら、レンの頭をポン、と撫でるミコト。「お前の夢を台無しにしちまった」
    「え……?」訳が分からないと言った様子でミコトを見上げるレン。
    「お前、盗賊になりたかったんだろ? なのに俺、盗賊の奴ら、叩きのめしちまった。これじゃ、一人前には認められねえだろ? だから、ごめん」そう言って頭を下げるミコト。「俺、お前の夢を応援するつもりが、お前の夢を壊しちまった。だから、ごめん」
    「俺からもごめんって言わせてくれよ」マナカが申し訳なさそうに眉を下げた。「カッとなったら止められねえんだ。レンが酷い目に遭ってるの見たらよ、もう頭に血が上っちまって……ごめんな、俺達、こんな風にしか立ち回れねえんだ、ごめんな……」と言ってミコトと一緒に頭を下げた。
     二人の男が、自分の血で血塗れになってでも、頭を下げている。自分の事など二の次で、レンが暴力を受けたと言う理由だけで、盗賊団を壊滅させてしまった。
     レンはそんな二人を抱き締めると、小さく首を横に振った。
    「謝るのはあたしの方よ……こんな怪我させちゃって、本当にごめん……っ」震える声で、レンは呟く。「あたしなんかのために、こんな目に遭わせて、本当に、ごめん……っ」
    「あうぅ……」そこにトテトテと走り寄ってくるクルガ。「皆、大丈夫……っ? 僕、何も出来なくて、ごめんなさい……っ」と三人を抱き締めるクルガ。
    「……皆謝ってどうするんだ」苦笑を浮かべて、その場にひざまずくミコト。「……だったら、誰も悪くなかったって事にしようぜ?」
    「そうだな! 皆謝るなら、皆許しちまおうぜ! だったら皆やったぁだよな!」バンバンとミコトとクルガの背中を叩くマナカ。「何泣いてんだよ! さっ、帰って肉食って寝ようぜ! そんでまた明日から頑張りゃいいじゃん! だろ!?」
    「……何であんたそんなに復活が早いのよ」涙を拭いながら、微笑が抑えられないレン。「バカじゃないの」
    「レン、笑ってる」泣き笑いの表情でレンを見上げるクルガ。「皆笑ってたら、僕も、笑える」
    「そうだな」ポン、とクルガの頭を撫でるミコト。「とんでもねー花見になっちまったけど、帰ろうぜ」と言って立ち上がろうとして、上手く立てないミコト。「っと、流石にすぐには動けねえみたいだ。血ぃ流し過ぎたかな」
    「! 待ってて、今魔法を――」と言ったレンの口元に指を添えるミコト。「ミコト……?」
    「またレンが倒れたら嫌だからな。その力は、いざって時だけにしてくれ。少し寝れば回復するから、今は使わなくて良い」力無く微笑み、ミコトはその場に大の字になって倒れ込んだ。「天気雨か。火照った体には丁度良いな」
    「……ねぇ、ミコト」ミコトの頭の傍に座り込み、彼の髪を撫でながら、レンは見下ろす。「……あたしね、盗賊よりも、なりたいモノが見つかったの」呟き、ミコトが返答する前に、続ける。「あたしね、本当は盗賊になんてなりたくなかったの」
    「そうなのか」不思議そうにレンを見上げるミコト。
    「あたし、人族の間に産まれた魔族でさ、親に捨てられて、どこに行っても石を投げつけられて、あぁ、あたしには生きる資格が無いんだなって、ずっと思ってたの」血で汚れたミコトの髪を撫でながら、レンはポツリポツリと言葉を落としていく。「そんな時に盗賊団に拾われたの。魔族であるあたしでも使ってくれる、ゴミクズとしてでも生かしてくれる、ここでしかあたしは生きられないんだなって、ずっと思ってた」
    「……」ミコトは己の頭を撫で続けるレンを見上げ、無言のまま話を促す。
    「魔族と知られたら、誰も近寄って来なくなる。石を投げられる。殺されそうになる。だからあたしはもう、諦めてたんだと思う。このまま、盗賊として、ゴミクズとして、一生を終えるんだろうなって、諦めてたんだと思う」レンの瞳は、ミコトの瞳を覗いたまま、離さなかった。「……でも、ミコト、あんたは違ってた。誰とも違う、あたしにとって、光みたいな人だった」
    「俺はそんな大層な人族じゃないさ」
    「だからね、あんたがあと一ヶ月で死ぬって知った時、神様がいるなら呪い殺してやりたいって思ったわ!」悔しそうに歯を食い縛るレン。「どうしてミコトみたいな人が死ななきゃいけないの!? 代われるなら、あたしが代わりに死にたいわよ! って、思ったわ。今も思ってる。でも、そんな事は出来ない事も、分かってる」
     レンはそこで言葉を区切り、ミコトの頭を撫でる手を止めて、両手でミコトの頬を挟んだ。
    「あたし、言ったわよね。ミコトの寿命が尽きるまで、ミコトの傍にいるって」
    「あぁ、言ったな」
    「……ミコト、言ったわよね。あたしの事が、……好きだ、って」
    「あぁ、言ったぞ」
    「……あたしがなりたいモノ、応援してくれるって、言ったわよね」
    「あぁ、言った」
     ミコトの肯定を聞いて、レンは緊張した面持ちから晴れやかな表情を覗かせ、彼を正視した。
    「あたし、ミコトのお嫁さんになりたいの」
     簡潔に、それだけ。
     レンは笑顔で、告げた。
     ミコトはその笑顔を見上げて、複雑な表情を覗かせる。
    「……俺、もう一ヶ月せずに死ぬんだぜ? お前、一ヶ月もしない内に未亡人になるんだぞ?」
    「あんたが仮に明日死ぬって分かってても、同じ事を言うわよ」ニヤリ、と八重歯を覗かせるレン。「あんたみたいな良い男、一日でも誰かに盗られたくないもん」
     ミコトとレンは見つめ合ったまま、暫く沈黙を置いた。
     それを傍目に見つめるマナカとクルガは、互いに手を握り締めてハラハラしていた。
    「……俺の負けだ」倒れたまま両手を挙げるミコト。「レンがなりたいって言うのなら、俺は応援する」そう言って微笑を浮かべる。「こんな頑張れる娘が嫁に来てくれるんだから、幸せにならない訳が無いしな」
     笑顔を見せるミコトを見て、レンはくしゃっと顔を歪め、彼の顔に涙を落とした。
    「泣くほど嬉しいのか?」
    「……バカ」
     ミコトに向かって倒れ込むレンに、彼は彼女の頭を撫でてあやし始めた。
     そんな二人を眺めていたマナカとクルガだったが、不意にマナカが「あ」と手を打った。
    「クルガ、思い出したぞ!」とクルガに向き直って得意気に指を立てるマナカ。「天気雨の別名!」
    「何て言うの?」マナカを見上げて小首を傾げるクルガ。
    「“魔族の嫁入り”だ!」満足気に頷くマナカ。「絶対に間違い無い!」
    「……うん、僕も、そんな気がする」マナカと一緒に頷くクルガ。「魔族の嫁入り、かぁ」
     ――晴れ間に不思議な雨が降り注ぐ時。
     それは、魔族の娘が人族の男に嫁ぐ時。
     そんな伝承が後にヒネモスの街に伝わるのは、また別の話……
    【後書】
     この「余命一月の勇者様」と言う物語を綴る上で、どうしても綴りたかったエピソードの一つが、この「天気雨」でした。
     それには大事な理由も付随しているのですが、それは読者様の想像に委ねると致します。わたくしはただ、このエピソードをどうしても綴りたかった、それだけ伝われば、何も言う事は有りません。
     いよいよ次回は無料配信最後の物語になります。次回、二十一話「友達として、相棒として、家族として」……どうかお楽しみに!
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    Comments

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    2017-03-13 22:29 
    日逆孝介 No.622
    > 更新お疲れ様ですvv
    >
    > とっても良い回です!!!
    > それ以上言うことないですvv
    >
    > 次回も楽しみにしてます!!

    感想有り難う御座いますー!

    ヤッター!(*´▽`*)
    楽しんで頂けて嬉しいですー!

    次回もお楽しみにー!!
    2017-03-13 22:28 
    tomi No.621
    更新お疲れ様ですvv

    とっても良い回です!!!
    それ以上言うことないですvv

    次回も楽しみにしてます!!
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