鎖錠の楼閣

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    【余命一月の勇者様】第19話 天気雨〈1〉【オリジナル小説】

    ■タイトル
    余命一月の勇者様

    ■あらすじ
    「やりたい事が三つ有るんだ」……余命一月と宣告された少年は、相棒のちょっぴりおバカな少年と旅に出る。

    ▼この作品は【鎖錠の楼閣】、【小説家になろう】、【ハーメルン】、【カクヨム】、【Enty】の五ヶ所で多重投稿されております。
    ▼表紙を断さんに描いて頂きました!

    ■キーワード
    異世界 ファンタジー 冒険 ライトノベル 男主人公 コメディ 暴力描写有り

    ■第19話
    20170131yuusya.jpg

    第19話 天気雨〈1〉


    「良い花見日和ね……」

     ヒネモスの町から少し歩いた所に在る焉桜の下で、茣蓙を敷いて四人は弁当箱を広げてのんびりと景色を楽しんでいた。
     幸い晴天に恵まれ、そよそよと吹く気持ちの良い風に当たりながら、レンが買ってきた握り飯を口に運ぶ。
     人影は疎らで、時折ヨモスガラの山林に出向く杣人が通るぐらいで、辺りは静寂に包まれていた。
    「良い香り……」クルガが焉桜を見上げて呟いた。
    「近くにいるから、前よりもっと香りが近く感じるよな」握り飯を齧りながら頷くミコト。「見頃はちょっと過ぎてるから、ちょっと散り始めてるか」
    「おいミコト! この肉まじ美味ぇーぞ! どこで買ったんだ!?」弁当箱に入っていた焼き肉を指差して喚くマナカ。「いつもの肉屋か!?」
    「いつもの肉屋だ」コックリ頷くミコト。「いつもの肉屋の、いつもよりちょっと良い肉だな」
    「すげぇ美味いなこれ! いつもの肉屋、本気出したのかな!?」焼き肉を摘まみあげて口に運ぶマナカ。「すげぇ美味いぞ!」
    「あぁ、マナカのために本気出してくれたんだよ」コックリ頷くミコト。「おまけもしてくれたしな」
     マナカがモリモリ弁当箱の中身を減らしていく姿から視線を上げ、若干散り始めている焉桜を見上げる三人。
     そよそよと吹く春風を受けて、ハラハラと散る花弁。それを眺めていると、不意にクルガがミコトの傍にやって来て、寄り添うようにくっついた。
    「どうした?」不思議そうにクルガを見つめるミコト。
    「ミコトの近くにいたくなった」ミコトを見上げて、えへへ、と笑むクルガ。「だめ?」
    「良いぞ」ポン、とクルガの頭を撫でるミコト。「ほら、いつもの干し飯より美味いって評判の握り飯、食べるか?」と言って弁当箱から握り飯を取り出すミコト。
    「食べるー」と言ってミコトから握り飯を受け取るクルガ。ぱくりと噛みつき、「美味しい」と頬を緩ませた。
    「……クルガ、ちょっとずるいわよ」
     羨ましそうに見ていたレンが、ミコトの傍に身を寄せてきた。
    「レンまでどうしたんだ?」不思議そうにレンを見据えるミコト。
    「あ、あたしもミコトの近くにいたいだけよ」恥ずかしそうに俯くと、上目遣いにミコトを見上げるレン。「……悪い?」
    「悪くない」ポン、とレンの頭を撫でるミコト。「レンも食ってるか? もっとたくさん食べて体力付けないとな」と言って握り飯を手渡す。
    「……ありがと」握り飯を受け取り、パクつくレン。「……そういうミコトこそ食べてる? さっきからマナカばっかり食べてる気がするけど」
    「食べてるさ」と言って再び握り飯を齧るミコト。「風、気持ち良いな」
     クルガとレンは同時に「「うん」」と頷き、三人で焉桜を見上げる。
     儚く散って行く焉桜は、どうしてもミコトの未来を連想してしまい、クルガとレンは少し沈んだ気持ちで視線を下ろし、同時に目が合って、くすりと笑みを交わすのだった。
    「おいお前ら! 肉無くなっちまうぞ肉! まじ美味しいんだって!!」ガツガツと肉を食べ続けるマナカ。
    「ちょっと!? もう半分も無いじゃない!?」弁当箱の中身が殆ど無くなっている事に気づくレン。「ちょっとは遠慮しなさいよ!」
    「ふふふ、知ってるかレン?」得意気な表情で笑むマナカ。
    「何よ?」
    「こういうのはな、“早い胃が勝ち”って言うんだぜ?」どや顔のマナカ。
    「……う? 言葉、何かおかしくない?」
    「そうなのかミコト?」
    「いや、マナカが言うんだから間違いないさ」グッと親指を立てるミコト。
    「だよな! 残念だったなレン! 俺の勝ちだ!」立ち上がって踏ん反り返るマナカ。
    「納得いかない! 納得いかないわ!! マナカに勝利宣言されるのだけは納得いかないわ!!」同じく立ち上がって断固として認めないと言わんばかりにマナカを指差すレン。
    「レン、負けるなー!」口元に手で輪を作って応援を始めるクルガ。
    「おっ、クルガはレンを応援するんだな? じゃあ俺はマナカを応援するぞ」ニヤ、と笑んで口元に手を添えて大声を張り上げるミコト。「マナカ! 俺達が喧嘩する時はどうするんだ!?」
    「決まってる! ジャンケンだ!」と言って拳を構えるマナカ。「行くぞレン!」
    「負けないわよ!」同じく拳を構えるレン。
    「「ジャンケン・ポン!」」レンがチョキを、マナカがパーを出した。
    「やったー! 勝ったわ!」嬉しそうに飛び跳ねるレン。「見た!? マナカ、あたしの勝利よ!!」
    「ぐわああああっっ、負けたああああっっ!!」悔しげに茣蓙を殴りつけるマナカ。「チクショウ!! 俺の負けだ!! 今肉を出すから待ってろよ!? う、うお、うおえ……」ガタガタ震え出した。
    「ヤメテ!? 出さなくて良いから!! そんな物はいらないから!! ヤメテーっ!!」
     レンの悲鳴と、ミコトとクルガの笑い声が木霊する。
     賑やかで楽しい時間は、のんびりと過ぎ去って行った。

    ◇◆◇◆◇

    「……ん? 何か団体さんが来るな」
     弁当を食べ終え、片づけを終えた四人が茣蓙の上でまったり焉桜を見上げていると、自分達の元に二十人近い集団が近づいて来るのが視界に映った。皮や鉄の装備を身に着けている事から、冒険者の類いだと分かるが、それにしても数が多い。
    「……!」集団の影を見咎めたレンが何かに気づいたように立ち上がる。「ちょっとごめん、行ってくる」と言って集団の元に駆けて行った。
    「レンの知り合いなのか?」不思議そうにミコトに声を掛けるマナカ。
    「だとしたら、盗賊かもな」レンを見送りながら、のんびり応じるミコト。

    ◇◆◇◆◇

    「お、お頭。どうしてここに……?」
     冒険者のような集団――盗賊団に、レンは駆け寄りながら声を掛けた。
     右目に傷が有る、三十代前半と思しき、総髪の男――頭領である蔵久(ゾウク)トウメは、レンを出迎えると下卑た笑みを覗かせた。
    「レン、お前も標的を見る目が養われたみてえだな」
    「え……?」
    「奴ら、火の花を持ってるんだろ? お前はそれを嗅ぎ当てる盗賊としての嗅覚を獲得した……違うか?」
     トウメは嬉しそうに笑んでいるが、レンは言い難そうに俯き、緊張した様子ですぐには返事を発せられなかった。
     トウメはそんなレンの挙動には気づかず、彼女の耳に口を近づけ、ボソリと呟く。
    「火の花を盗んで来い。そうすりゃ、お前を幹部にしてやる」
    「……っ!」
    「分かるだろ? お前みたいな半端者が生きてくには、盗賊しかねえんだぜ? 俺の言う事さえ聞いてりゃ良いんだ。分かったらとっとと盗んで来い」
     トウメが顔を遠ざけ、レンを笑顔で見据える。「どうした? 早く行かねえか」
    「……あ、あの、お頭……」緊張で張り裂けそうになりながらも、レンは顔を上げ、トウメを正視する。「あたし……、――盗賊を、辞めます」
     数瞬、周囲には沈黙が流れた。
     やがてトウメの表情に不愉快な色が点り、「あ?」と小首を傾げた。
    「あたし、盗賊よりもなりたい事が出来て、その……ごめんなさい!」頭を下げて、レンは声を張り上げた。「だから、ミコトの事は……彼らの事は、見逃して欲しいんです!」
     徐々に盗賊団の間にざわめきが広がって行く。不信と、苛立ちと、困惑が、緩やかに浸透していく。
    「……それは、火の花をお前一人で独占するって事か?」レンの胸倉を掴みあげるトウメ。「舐めた口利くようになったな? 奴らに唆されたか?」
    「違うっ、違うんですっ」フルフルと首を振るレン。「あたしはただ、彼らの……」
    「――おいお前ら。レンに根性入れてやれ」レンを叩き落とすと、腹を蹴り上げるトウメ。「俺達に舐めた口利いたらどうなるか、知らない訳無いよなぁ?」
    「うっ……く……っ」腹を押さえて蹲るレン。「お願い……します……ッ、ミコトには……手を、出さない……で……ッ」
    「――痛めつけろ」

    ◇◆◇◆◇

    「――おい、ミコト」
    「分かってる」
     レンの様子を見ていたマナカが殺気立った声を上げ、同時にミコトが立ち上がる。
     クルガが怯えた様子で二人を見上げ、「レン、どうしたの……?」と震えた声を漏らした。
    「――クルガ。俺達はたぶん、これから悪い事をする」ポン、とクルガの頭を撫でるも、視線は集団に向いたままのミコト。「お前は、出来ればここで待っててくれ」
    「ミコト。――暴れて良いんだな?」マナカの飢えた声が漏れる。
    「事情を聞いてからだ、俺が合図を出すまで待機。我慢できるな?」
    「分かった。我慢する」
     それだけ言葉を交わすと、ミコトは改めてクルガの頭を撫でる。「ごめんなクルガ、ちょっとだけ待っててくれよな」それだけ言い残すと、ミコトはマナカの肩を叩き、「じゃあ、ちょっと行ってくる」と言って歩き出した。
     その時、ぽつ、とクルガの頭に雨滴が落ちてきた。空は晴れているのに、ポツポツと降り注ぐ雨粒に、クルガは「晴れてるのに、雨」と空を見上げて呟く。
    「天気雨か」辺りに降り注ぎ始めた白雨に、マナカは先刻の殺気立った表情を引っ込めて、クルガに向き直った。「知ってるかクルガ? 天気雨って、別の言い方も有るんだぜ?」
    「別の言い方?」不思議そうに小首を傾げるクルガ。
    「そうだ! 何だっけ、えーと……何とかの嫁入り、って言うんだ! 知ってたか?」
    「知らない」ふるふると頭を振るクルガ。「何とかって、何?」
    「何だったかな……狸……いや猫……? 忘れちった!」てへ、と舌を出すマナカ。
    「マナカ。もしかして、和ませてくれてる?」マナカにそっと近寄り、しがみつくクルガ。「僕、怖いよ。何か、嫌な事が起きそうで、怖いよ」
    「大丈夫だ、俺とミコトがいれば問題無い」ポンポンとクルガの頭を撫でるマナカ。「クルガは心配しなくて良いって」と言って歯を見せて笑いかける。
     クルガはそんなマナカの笑顔に、心配そうな視線を向ける。マナカはそんなクルガに気づいていないのか、視線を再び集団に向け、ぴり、と張り詰めた雰囲気を纏う。
     こんなマナカを見るのは初めてだった。殺気立った猛獣のような瞳。クルガの言う、嫌な事が起こると言う予想は、当たる確信が有った。
     二人の見つめる先でミコトが集団の元に辿り着く。集団の長と思しき男と対峙し、ミコトはちら、と彼の背後に蹲るレンを見据える。
    「レンを苛めるのはやめてくれないか」
    「火の花を持ってるだろ? それを寄越せ」
    「お前は何なんだ」
     ミコトの瞳には敵意が剥き出しの炎が点っている。それに気づいていないのか、トウメはニヤリと口唇を歪め、腕を広げた。
    「俺達は盗賊だ。そして俺はその頭領。これで良いか?」
    「どうしてレンを苛める」
    「どうして? 仕事を真面目にしないクソアマに根性を入れてるだけだ、お前にとやかく言われる筋合いは無い」
    「レンは頑張ってるだろ。苛める必要は無い筈だ」
    「ごちゃごちゃ煩いガキだな! そんなにこのクソアマが大事か? もしかして好きなのかこいつが? ん?」
     レンの髪を掴みあげて引き摺り上げるトウメに、レンは悲痛な表情でミコトを見据える。
    「ミ、コト……」
    「あぁ、好きだよ。だからそれ以上苛めるのをやめろ」
     レンを正視したまま即答するミコトに、トウメは一瞬惚けた表情をした後、下卑た笑声を上げ始めた。
    「ガハハハハ! そうか! このクソアマに惚れちまったか! だがな、よく聞けよクソガキ。このクソアマは魔族なんだぜ!? 人族の間に産まれた、ゴミクズなんだぜ!? 笑えるだろ!? ガハハハハ!」
    「それ以上レンを悪く言うと殺すぞ」
     冷え切った声で、ミコトが告げる。
     トウメの笑声に追従していた周りの団員が声を潜め、トウメ自身も怪訝な表情でミコトを見据える。
     歯を食い縛り、拳を固く握り締めているミコトは、明らかに何かを我慢していた。何を我慢しているのか、誰にも分からなかったし、トウメは恐怖を我慢しているのだと当たりを付け、下卑た笑みを口唇に刷く。
    「そんなにこのクソアマが大事だってんなら、火の花と交換しようぜ、クソガキ」空いている手を差し出すトウメ。「このクソアマが火の花より大事なんだよなぁ?」
    「これで良いか?」小さな鞄から取り出した火の花を投げ渡すミコト。
    「ミコト……っ」泣きそうな表情でそれを見つめるレン。
     火の花を受け取ったトウメは、驚いた表情でミコトを見据える。
     ミコトは醒めた表情でトウメを睨み据えたまま、レンを指差す。
    「レンを解放しろ」
     ミコトの言葉には、力が有った。威圧感とでも言うべき、重圧が掛かっている。
     トウメはその得体の知れない圧力に屈するように、「ちッ、行け!」とレンを押し出した。
     弾き飛ばされるようにミコトの元に倒れ込んだレンを、彼は確り抱き留めた。
    「大丈夫か?」レンを抱き締めたまま、背中を摩るミコト。「今町に連れてってやるからな」
    「……っ、ごめん……っ、ごめん、ミコト……っ」ミコトを抱き締めたまま泣きじゃくるレン。「ごめんなさい……っ」
    「レンが謝る事は何も無いぜ」ポンポンと背中を撫でるミコト。「それに謝るのは俺の方だ、ごめんなレン」と言って、レンをその場に座らせた。
    「ミコト……?」涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、ミコトを見上げるレン。
     ミコトは火の花を持つトウメを睨み据え、「おい、お前」と声を掛けた。
    「あ? 何だ?」
    「レンに謝れよ」
    「は?」
    「蹴っただろ、さっき。お前が謝って、レンが許すのなら、俺も許す。だが、お前が謝らないのなら、レンが許さないのなら、お前を叩きのめす」
     睨み据えたまま告げた宣誓に、トウメは一瞬惚けた表情を浮かべた後、下卑た笑みを口唇に刷き、爆笑した。それに合わせるように盗賊団も追従を始める。
    「ガハハハハ! お、お前、バカだろ!? 謝る訳無いだろ!? 悪いのはそいつだぜ!? 何故俺が謝る必要が有る!? お前が代わりに謝ってくれるってんなら、そいつを雑用としてまだ使ってやってもいいがな! ガハハハハ!」
    「そうか。――マナカ、暴れるぞ」
     ミコトが片手剣を抜き放った瞬間、その遥か後方から「ウオオオオッッ!!」と雄叫びを上げてマナカが突っ込んで来た。
    【後書】
     前半のほのぼのコメディが嘘のようなシリアス展開の後半です。
     この物語を綴る上でどうしても綴りたかったシーンの一つがこれから始まります。と言う訳で次回、「天気雨〈2〉」……素敵な雨を降らしましょう。
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    Comments

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    2017-03-08 22:54 
    日逆孝介 No.616
    > 更新お疲れ様ですvv
    >
    > 前半と後半でこれだけ温度差のある回も珍しいですね。
    > ダークだったレンさんを明るくしてしまったミコト君たちの家族愛VS盗賊団。
    > どうなっていくのかとても楽しみですvv
    >
    > 次回も楽しみにしてますよー

    感想有り難う御座いますー!

    確かに珍しいかもですな! 偶にはそういう回が有っても……いいですよね!
    変わってしまったものがどういう道を辿るのか、ぜひ最後まで目を離さずについて来て頂けると嬉しいです!

    次回もお楽しみにー!
    2017-03-08 22:42 
    tomi No.615
    更新お疲れ様ですvv

    前半と後半でこれだけ温度差のある回も珍しいですね。
    ダークだったレンさんを明るくしてしまったミコト君たちの家族愛VS盗賊団。
    どうなっていくのかとても楽しみですvv

    次回も楽しみにしてますよー
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