鎖錠の楼閣

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    【余命一月の勇者様】第18話 楽しむのは得意なんだ【オリジナル小説】

    ■タイトル
    余命一月の勇者様

    ■あらすじ
    「やりたい事が三つ有るんだ」……余命一月と宣告された少年は、相棒のちょっぴりおバカな少年と旅に出る。

    ▼この作品は【鎖錠の楼閣】、【小説家になろう】、【ハーメルン】、【カクヨム】の四ヶ所で多重投稿されております。
    ▼表紙を断さんに描いて頂きました!

    ■キーワード
    異世界 ファンタジー 冒険 ライトノベル 男主人公 コメディ 暴力描写有り

    ■第18話
    20170131yuusya.jpg

    第18話 楽しむのは得意なんだ


    「あぁ~、体が溶けるぅ~」

     宿屋の中に在る温泉に入り、蕩けるような声を吐き出すマナカ。
     隣ではタオルを頭に載せたミコトが、クルガに向かって「熱くないか?」と声を掛けていた。
    「気持ち良い……」ほわぁ、とマナカのように蕩けた表情のクルガ。「温泉って、体も心も、ポカポカするね」
    「それはクルガがそれだけ頑張った証拠だな」温泉の中に点在する椅子代わりの岩に腰掛けるミコト。「確り疲れを癒して、明日の花見に備えようぜ」
    「うんっ、ポカポカー」気持ち良さそうにミコトの隣で足をパタパタさせるクルガだったが、不意にマナカを見て「マナカ、それ、痛くない?」と背中を指差した。
    「ん? あぁ、これか?」とマナカは背中の傷痕――大きな裂傷の古傷を撫でる。「全然痛くねーぜ! 昔の傷だからな!」
    「凄い大きい傷」マナカに歩み寄って、そっと古傷を撫でるクルガ。「マナカ、こんな傷、耐えた事、有るんだね」
    「それがなー、俺記憶無いんだよなー、この傷を受けた時の記憶」クルガに向き直り、顎を摘まんで小首を傾げるマナカ。「小さい頃から有るんだよ、この傷。だから生まれた時にでも付いたんじゃねーかな?」
    「生まれる時に傷が付く事、有るんだ!」驚きに目を瞠るクルガ。「凄いね!」
    「そうだろう!? 凄いだろう!? ナハハハ!」楽しげに大笑するマナカ。
    「マナカ、折角だからあの変な痣も見せてやればいいんじゃないか?」マナカの脇腹を指差すミコト。
    「お、そうだな! へへへ、クルガ見ろよこれ!」と言って右の脇腹を見せるマナカ。「カッコいいだろ!?」
     マナカの脇腹に近づいて、まじまじと見つめるクルガ。その視線の先には、桜の花のような形をした痣が刻まれていた。
    「これも傷?」不思議そうにマナカの脇腹を撫でるクルガ。「凄い、綺麗」
    「これも小さい頃から有るんだけどよ、カッコいいと思わねえか?」痣をツンツンと突くマナカ。「ミコトが見つけたんだけどよ、これ俺気に入ってんだ! 何か、カッコいいだろ!?」
    「うん、カッコいい!」マナカを見上げてコクコク頷くクルガ。
    「だろぉ!? へへっ、クルガも分かってるじゃねーか! へへへっ!」嬉しげに鼻の下を擦るマナカ。
    「レンには見せないの?」近くに在った岩に座り込みながら尋ねるクルガ。
    「お、そうだな、レンにも見せて自慢してやらねえとな! おーい! レーン! 今からそっち行って良いかー!?」ザバザバと湯を掻き分けて女湯の方へ歩き出すマナカ。
    「ダメに決まってんでしょバカーッ!」すると高い柵を飛び越えて桶が飛んできて、マナカの頭にクリーンヒットした。
    「ダメだって」トボトボと戻ってくるマナカ。
    「そうだな、また今度の機会に見せてやれよ、な?」マナカの頭に出来たコブを撫でながら苦笑を浮かべるミコト。
    「ミコト」
     岩の上で正座をして、ミコトを正視するクルガが視界に映り込んだ。ミコトも姿勢を正し、「どうした?」とクルガを見やる。
    「僕、ミコトのお陰で、ちょっと、ううん、とても、自信、持てるようになったと、思う」舌足らずな様子で、言葉を選びながら告げるクルガ。「ミコトは、自分に恩義、返さなくても良いって、言ったけど、僕、ミコトに何かしてあげたい。僕にも出来る事、無い?」
     真剣な表情でミコトを見据えるクルガの瞳に曇りは無かった。
     ミコトもそれに応えるように、クルガから目を逸らさずに考え込む。
    「ミコトは、僕に一人前になって欲しいって、言った」言い募るように、クルガは口を開いた。「僕、一人前になるために、頑張る。けど、ミコトにも、お返ししたい。頑張る気持ちにさせてくれた、お礼、したい」
    「頑張る気持ちにさせたお礼、か」思わず微笑が浮かぶミコト。「その気持ちだけでも俺はとても嬉しいけど、クルガはそれじゃ満足できないんだな?」
     コクコクとクルガは小さく首肯を繰り返した。
    「だったら……そうだな」クルガの頭をポン、と撫でるミコト。「俺からもお願いしたい。俺の寿命が尽きるまで、一緒にいてくれないか?」
    「一緒に、いれば、良いの?」ミコトを上目遣いに見つめるクルガ。
    「あぁ。クルガが俺の事を想ってくれてるのなら、俺はそんなクルガと一緒にいたいって思ったんだ。……それじゃ、ダメか?」
    「……」
     クルガは俯いて何事か考えているようだったが、やがて顔を上げると、小さく顎を引いた。
    「ミコトのお願いだもん、僕、ミコトと一緒にいる。ミコトは、僕といると、幸せ?」
    「あぁ、幸せだな」即答し、コックリ頷くミコト。
    「僕も、幸せ」えへへ、とはにかみ笑いを浮かべるクルガ。
    「俺も俺も! 俺もミコトと一緒にいると幸せだし、クルガと一緒だともっと幸せだぜ!!」必死に自分を指差してアピールするマナカ。
    「そうだな、マナカも一緒なら、もっと幸せだな」マナカの肩を叩くミコト。
    「レンも一緒なら、もっと、もっと、幸せ!」嬉しげに笑むクルガ。
    「だな! じゃあレンも呼んじゃうか! おーい! レーン! お前もこっちに来いよーっ!」と言ってザバザバ湯を掻き分けて女湯に向かって行くマナカ。
    「行く訳無いでしょバカーッ!!」再び高い柵を飛び越えてカーブを描いて飛来した桶がパカーンッ、と音を立ててマナカの側頭部に直撃した。
    「断られた……」トボトボと二人の元に戻ってくるマナカ。
    「マナカって、時々変な事するよね?」ミコトを見上げて呟くクルガ。
    「そうだな、それがバカッコいいって事だ」うんうん頷くミコト。
    「バカッコいい……深いね」ミコトと一緒にうんうん頷くクルガ。
    「あぁ、深いな」
     その頃女湯では「恥ずかしい……恥ずかしい……」と呟く、周りから奇異の目で見られて赤面しているレンの姿が有ったとかなんとか。

    ◇◆◇◆◇

    「フカフカのお布団だーっ!」
     六人部屋の客室を貸し切って、四人は夕暮れに沈む部屋で涼んでいた。
     部屋に戻るなりマナカが敷かれていた布団にダイブし、「うおわーっ、フカフカ、フカフカだぞーっ!」と、あまりのフカフカ具合に悶え始めた。
    「夕飯美味しかったわね」マナカを跨いで部屋の奥に在る狭いスペースの椅子に腰掛けるレン。「あの、お刺身って言うの? 生魚の切り身があんなに美味しいとは思わなかったわ……」
    「俺も初めて食べたけど、また食べたくなる美味しさだったな」マナカの隣に座り込むミコト。「ん? どうしたクルガ」
     部屋に入るなり、ミコトの前に直行したクルガは、両腕を広げて困った表情を浮かべていた。
    「この浴衣、上手く着れない……」だらんと垂れた帯と、前が完全に肌蹴た浴衣を見せるクルガ。「ミコト、着るの手伝って」
    「よし、ちょっと見せてみろ」と言って膝立ちでクルガの前に立つミコト。「まず、こういう着物は、基本的に左側が上前になる。反対にすると死に装束と言って、死人が着る装束になるからな」と言って浴衣の前を合わせていく。「帯は、前から後ろにやって、後ろで交差させて、前に持ってくる。これで、蝶結びをすれば……完成だ」キュッと帯を絞って、ポン、と結び目を叩くミコト。
    「わーい、有り難う、ミコト」綺麗に着られて、嬉しそうにぐるっとその場で回るクルガ。「ミコトは、何でも出来るね」
    「母さんに色々教えられたからな」改めて布団の上に座り込み、苦笑を浮かべるミコト。「クルガが良ければ、色々教えるぞ?」
    「ほんとに?」顔を華やがせるクルガ。「教えて! ミコト、先生だね!」
    「ミコト先生は優しいぞ! 何せこの俺にすら怒らずに教えてくれるんだからな!」誇らしげに胸を張るマナカ。
    「一応相手を怒らせてるって自覚は有るのね……」呆れた様子でマナカを見やるレン。「あたしもまだこの浴衣の着方、よく分かってないのよね。何か帯が緩くて外れそうになるって言うか」
    「だったらタオルを内側に巻くと良いかもな」レンを見やるミコト。「レンは腰が細いしな、タオルで少し補強してから帯を巻けば、今よりは緩くならない筈だ」
    「へー、そうなんだ」立ち上がり、枕元に置いてあったタオルを掴んで部屋を出て行こうとするレン。「じゃあちょっと試してみてくるわ。ありがとね」と言ってミコトを振り返った瞬間、帯が落ち、浴衣の前が肌蹴た。
    「ん? レン、お前パンツは――」
     次の瞬間、目にも留まらぬ速さで三人の目は潰され、阿鼻叫喚の地獄絵図が出来上がった。

    ◇◆◇◆◇

    「……浴衣の下に下着って付けて良かったのね、初めて知ったわ……」
     部屋の灯りが消えてもなお、レンの顔が赤く染まっているのが分かった。
     あの後、物凄い勢いで部屋を立ち去ったレンは、脱衣所で改めて浴衣を着直した後、ミコトに「浴衣の下に下着は付けて良いんだぞ?」と告げられて、再び脱衣所に戻って下着を着用してから戻ってきて、そのまま消灯を迎えたのだった。
    「知らなかったら分からないもんな」苦笑を浮かべるミコト。「併しあの早業はやっぱり盗賊のそれだな」
    「凄かったよな!? 俺一瞬何が起こった分からなかったもん! 突然、あれ!? 目が痛え! 何!? 何が起こったんだ!? って言ってたらもうレンいなかったもんな!」興奮しきりのマナカ。
    「レンって、やっぱり凄いんだね!」寝返りを打って、レンに向き直るクルガ。「僕も、あんな速く動けるようになるかなぁ」
    「……そんなところ褒められても嬉しくないんだけど……」複雑な想いで微苦笑を浮かべるレン。「……ミコトは、普段からこういう所に泊まってるの?」
    「いや、普段はもっと安宿だな」欠伸を噛み殺しながら応じるミコト。「皆が頑張ってくれたお陰でこんな大金を得られたんだから、そんな皆に大金を使うのは、自然な流れだろ?」
    「え、じゃあこの宿屋って、その、やっぱり……お高い感じ、なのよね……?」恐る恐ると言った様子でミコトを見上げるレン。
    「四人で一泊七千だったな」
    「……道理でご飯があんなに美味しい訳よね……温泉も広かったし、この客室もとても綺麗だし……」
     レンのどこか遠い目をしているかのような呟きに、ミコトは「それだけ俺が、皆に感謝してて、今後にも期待してるって事だな」と微笑を覗かせた。
    「おう! ミコトのためなら全力で頑張るぜ!」ドンッとマナカが胸を叩く音が聞こえた。
    「僕も、頑張るよ!」力がこもったクルガの声。
    「……これだけ至れり尽くせりされて、頑張らない訳にはいかないじゃない?」呆れた声で応じるレン。「明日は花見だったわね。ミコトも、全力で楽しみなさいよ?」
    「任せとけ、楽しむのは得意なんだ」小さな笑声を零すミコト。
     そこで不意に沈黙が部屋に訪れた。
     宿屋の外の微かな喧噪、宿屋の中の廊下を歩く客の足音、春風が宿屋を通り過ぎて行く風声、野鳥の静かな鳴き声、……家族の、安らかな寝息。
     色んな音が混ざり合った静寂の中で、ミコトはぼんやりと暗がりに沈んだ天井を見上げていた。
     一ヶ月しか寿命が無いと言われて始めた旅は、やっと始まりを迎える段階に辿り着こうとしている。逆に言えば、始まりを迎えずに、もう五日も経過した事になる。
     にも拘らず、ミコトの中に焦燥や恐怖は全く込み上げてこなかった。マナカと二人でいる時に感じていた安心感が、二人の新たな家族により、もっと大きく膨れ上がって、ミコトの心に安寧を齎していた。
     自分は、一ヶ月後にいなくなる。それまでに出来る事を成す。それは何も、自分の叶えたい夢だけを見据えている訳ではない。
     マナカには、自分のいない世界でも、途方に暮れず生活を続けて欲しい。
     クルガには、自分のいない世界でも、自分の力で生きる力を得て欲しい。
     レンには、自分のいない世界でも、一人前の盗賊として過ごして欲しい。
     三人が、ミコトと言う存在を失っても、ちゃんと人生を謳歌できるように、教えられる事を教え、正せる所を正し、示せる道を、示していきたい。
     三人はミコトにとって大切な家族だから、三人がミコトと言う存在を失った時に、道に迷わないように、きっと自分にも何か出来る事が有る筈だと、ミコトは拳を固める。
     素敵な思い出を作りたいと思ったのは、自分に出来る事の一つだと感じたからだ。嬉しい事や楽しい事は、生きる糧になる。辛い事や悲しい事が有っても、いつかまた嬉しい事や楽しい事を思い出せれば、それだけで力になると、ミコトは知っているから。
     ――母が、それを証明してくれたから。
     そうしてミコトは、緩やかに眠りに落ちていく。この幸せが、ずっと続く事を祈って、静かに瞼を下ろす。

    ■残りの寿命:25日
    【後書】
     サーヴィスシーンを入れたかったんだ……(などと供述しており(ry))
     一ヶ月間の物語の五日目が終わりました。別の自作物語である「戦戯」では一日が終わるのに三十話近く掛かりましたが、この「余命一月の勇者様」では十八話掛けて五日まで来ました。予定では五十話程度で完結する予定なので、少しペースは遅め、と言った感じでしょうか。
     あとこれは物語とは直接関係有りませんが、今後配信される二十一話を以て「余命一月の勇者様」の続きは「enty」と言うクリエイターを支援するサイトでのみ更新していく予定です。月額1500円支払ってでも続きが読みたい人にだけ読んで頂きたいので、悪しからずご了承くださいませ。
     なお一話から二十一話までは従来通り無料で公開しておきますので、今までの物語が有料になる事は有りません。詳しくは活動報告、或いはBlogの「【雑記】日逆孝介の創作物を有料で配信していくお知らせ」 http://gizokunoutage.blog109.fc2.com/blog-entry-1980.html をご一読頂けますと幸いです。
     次回、「天気雨〈1〉」……お花見と共に忍び寄るは、不穏な影。お楽しみに!
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    Comments

    post
    2017-03-01 07:56 
    日逆孝介 No.603
    > 更新お疲れ様ですvv
    >
    > のんびり回大好物ですw
    > のんびりなのですが、サーヴィスシーンまで含まれているとは…
    > さすが先生ですvv
    > それにしても驚かされるのが、レンさんの桶コントロールの正確さですなw
    >
    > 二十一話以降有料の件了解です。
    > ちょ、ちょうどいいとこで…これじゃ蛇の生殺しじゃねえか…
    >
    > あ、あれれ…おきになさらずーw
    >
    > 次回も楽しみにしてまーすvv

    感想有り難う御座いますー!

    のんびり回良かったですか!w
    サーヴィスシーンを入れずにはいられなかった……!w
    レンちゃんは一体どこでそんな技術を会得したのか……やっぱりレンちゃんは凄い人だった!w

    有料の件、宜しくお願い致しますー!

    次回もお楽しみにー!
    2017-02-28 23:19 
    tomi No.601
    更新お疲れ様ですvv

    のんびり回大好物ですw
    のんびりなのですが、サーヴィスシーンまで含まれているとは…
    さすが先生ですvv
    それにしても驚かされるのが、レンさんの桶コントロールの正確さですなw

    二十一話以降有料の件了解です。
    ちょ、ちょうどいいとこで…これじゃ蛇の生殺しじゃねえか…

    あ、あれれ…おきになさらずーw

    次回も楽しみにしてまーすvv

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