鎖錠の楼閣

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    【余命一月の勇者様】第16話 彼の成したい事、彼女の成したい事〈3〉【オリジナル小説】

    ■タイトル
    余命一月の勇者様

    ■あらすじ
    「やりたい事が三つ有るんだ」……余命一月と宣告された少年は、相棒のちょっぴりおバカな少年と旅に出る。

    ▼この作品は【鎖錠の楼閣】、【小説家になろう】、【ハーメルン】、【カクヨム】の四ヶ所で多重投稿されております。
    ▼表紙を断さんに描いて頂きました!

    ■キーワード
    異世界 ファンタジー 冒険 ライトノベル 男主人公 コメディ 暴力描写有り

    ■第16話
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    第16話 彼の成したい事、彼女の成したい事〈3〉


    「……? ミコト、何か来る」

     夜が更け、ウトウトしていたクルガだったが、不意にミコトの袖を引っ張って声を漏らした。
     クルガの声に反応するように、寝袋に入りかけていたレンが「何かって、どこから?」と動きを止めて声を掛ける。
    「あっち」
     クルガが指差す方角は、ヒネモスの街の方向だ。
     三人がクルガの指差す方向に目を凝らすと、確かに小さな灯りが視界に映り込んだ。
     小さな灯り。恐らくは馬車の御者台に掲げられた灯火だと、ミコトとレンは察した。
    「何だあれ? もう朝になるのか?」横になっていたマナカがもそもそと起き上がる。
    「冒険者かな?」ミコトを見上げるレン。「それとも、こんな時間に出歩くって事は猟師かしら」
    「ヨモスガラの山林での夜狩りは禁じられてるから、猟師ではないと思う」立ち上がり、こちらに向かってくる小さな灯りを見据えたまま、呟きを落とすミコト。「仮に猟師だとしたら、密猟者の可能性が高いな」
    「それって……あたし達、見つかると不味いんじゃ……?」
     緊張を感じさせる声音で呟くレンに、ミコトは「仮に密猟者だとしたら、俺とマナカで止めるさ」と言って小さく微笑を覗かせた。
    「おう、任せとけよ! 暴れればいいんだな!?」胸をドンッと叩いて自信満々に告げるマナカ。
    「まだそうと決まった訳じゃないが、その時は頼むぜ、マナカ」ポン、とマナカの肩を叩くミコト。
    「おうよ! 俺とミコトがいれば百人力……いや、百一人力だな!」
    「何で敢えて一だけ付け足したの?」呆れた様子でマナカを見やるレン。「あんまり無茶しないでよ? あたしまた倒れるの嫌よ?」
    「分かった、レンが心配するような怪我はしないようにする」ポン、とレンの頭を撫でるミコト。
    「ん、分かってるなら良いのよ」照れ臭そうに頷くレン。
     やがて灯火は目前に迫り、車輪が轍を作る音が鮮明に聞こえるようになってきた。
     遠目では分からなかったが、目前で停まった馬車は豪奢な造りだった。全体は木造なのだが、随所に意匠を凝らしてあり、綺麗に磨かれているのか、焚き火の炎光を反射してキラキラと輝いている。
     御者台にいたのは、七十代程の年老いた白髪の老爺。糸目で、体の線が細い枯れ木のような男は、四人の姿を視野に捉えると、「夜分申し訳ない、ここに咲原ミコトと言うお方はいらっしゃいませんか?」と張りの有る声を上げた。
    「ミコトならこいつだぜ!」とマナカがミコトの肩を叩く。
    「俺がそうだが」老爺を見上げて声を返すミコト。
    「ぉお、貴方が……」老爺は驚きに目を瞠ったかと思えば、すぐに御者台から降り、ミコトの前で胸に手を当て、深々とお辞儀をした。「申し遅れました、わたくし冒険者ギルドの纏め役の補佐をしております、佐辻(サツジ)ホシと申す者です。以後お見知り置きを」
    「冒険者ギルドの纏め役の補佐が俺に何の用なんだ?」事情が呑み込めない様子で小首を傾げるミコト。
    「それは――」「ホシ、後は僕が話そう」「――畏まりました」
     御者台の窓から顔を出したのは、二十代後半と思しき、眼鏡を掛けた青年だった。黒々とした髪をきっちり七三に分けた、皺一つ無い礼服に身を包んだ、貴族の坊ちゃんと言われたら納得できそうな男は、馬車から降りると、四人を前に興味深そうに瞳を眇めた。
    「あんたは?」不思議そうに尋ねるミコト。
    「おっと、済まない、申し遅れたね。僕は桶雲(オケグモ)サボ。冒険者ギルドの纏め役を務めている者だ」スッと優雅に一礼するサボ。「咲原ミコト。君と話がしたいのだが、いいかね?」
    「俺は構わないぜ」コックリ頷くミコト。「何の話をするんだ?」
    「立ち話も何だ、馬車に乗ってくれ」と言ってホシに扉を開けさせると、客車に戻って行くサボ。「中で話そう」
    「家族を一緒に乗せても良いか?」乗る前に窓に映るサボの影に声を掛けるミコト。
    「構わないよ。ちょっと狭くなるかも知れないが」
    「助かる。良し、野宿の準備を片付けて、全員馬車に乗るぞー」パンパンと手を叩いて片づけに入るミコト。
    「俺、馬車なんて初めて乗るぜ!」胸が躍るのを抑えられない様子のマナカ。「靴って脱がないといけないのか!?」
    「靴は脱がなくても大丈夫です」ホシが胸に手を当てたまま応じた。
    「そうなのか! 馬車ってすげーな!」
     寝袋を小さく纏め、焚き火を踏み消すと、四人は馬車に乗り込んだ。
     元々四人用の馬車なのだろう、マナカの膝の上にクルガが座ってギリギリの大きさだった。
    「ホシ、行ってくれ」「畏まりました」
     パシンッ、と鞭を打つ音が聞こえたと思った瞬間、馬車はごとごとと音を立てて動き始めた。
    「どこに向かってるんだ?」隣に座るサボに向かって声を掛けるミコト。
    「ヒネモスの街だ。君達がヒネモスの街に向かうと窺っていたのだが……もしかして僕の早とちりだったか?」不安そうにミコトに向き直るサボ。
    「いや、合ってるが……何で俺達がヒネモスの街に向かうって知ってるんだ?」
    「分かった! お前、俺達の話を聞いてたんだな!?」ビシッとサボを指差すマナカ。
    「ちょっと、失礼でしょ!」マナカの指を叩くレン。「そもそもどうやってあたし達の話を聞くのよ!? 今来たばかりでしょこの人!」
    「そうなのか?」不思議そうに隣に座るレンを見やるマナカ。
    「そうなの!」もう他に説明のしようが無くなっているレン。
    「……こほん」小さく空咳を落とすサボ。「ヒネモスの街の者から連絡を受けてね。ネイジェ=ドラグレイから、風ノ音鳥が届いたと」
    「あんた、ネイジェの知り合いなのか?」サボに向き直るミコト。
    「ミ、ミコト? その人、一応偉い人なのよ……? もうちょっとその、畏まった方が良いんじゃないかしら……?」恐る恐る声を掛けるレン。
    「ははっ、構わないさ」思わず笑声を上げるサボ。「貴女も無理に畏まる必要は無いよ。公の場なら困るが、ここは非公式の場だ。自由に振る舞ってくれて構わない」
    「そ、そうなの……?」戸惑いを隠せない様子のレン。
    「さて、ネイジェ=ドラグレイが知り合いか、と言う質問だが」ミコトに向き直るサボ。「僕はイエスと答えたいが、ネイジェ=ドラグレイはノーと答えるだろうね」
    「片思いなのか」
    「ふふ、君は素敵な表現をするね」嬉しげに、そしてどこか誇らしげに口元に手を運ぶサボ。「僕はね、ネイジェ=ドラグレイの話が聞きたいんだ」
    「ネイジェの話?」きょとんと瞬きするミコト。「あいつに直接聞けば良いんじゃないか?」
    「彼と逢える者は限られているんだ。そして僕はその限りじゃない」指を組んで、自分の手に視線を落とすサボ。「君達が何故彼と逢えたのか、その辺の話を聞かせて欲しいんだ。――勿論、彼に口止めされているのであれば、或いは君達が話したくないのであれば、無理に話す事は無い。聞ける範囲での、彼の話を伺いたいんだ」
    「どうして逢えたかって言ったら」マナカが顎を摘まみながら明後日の方向に視線を投げる。「オワリグマに案内されたからだよな?」
    「そうだな」コックリ頷くミコト。「オワリグマがいなければ、俺達はネイジェに逢えなかっただろうな」
    「オワリグマもそうだけど」言いながらレンはクルガの頭を撫でた。「クルガがいたからこそ、案内してくれたのよね?」
    「僕だけの力じゃないよ!」レンを見上げて、それからマナカ、ミコトを見やるクルガ。「皆が、ミコトが、マナカが、レンがいたから、僕、頑張れたんだ!」
    「つまり、俺達四人がいたから、逢えたって事だな」コックリ頷くミコト。
    「……ふふ、はははは!」楽しげに大笑するサボ。「そうか、君達でなければ逢えなかったか! なるほど、それは、僕では逢えない訳だ! あははは!」
     サボが笑い転げる中、四人は釣られるようにして笑みを零していた。
    「ははは……、あぁいや、済まない。では話を変えよう。ネイジェ=ドラグレイがどんな話をしていたか、聞かせてくれないか?」
    「どんな話って、俺達にこの世界の事を話してくれたぞ」改めてサボに向き直るミコト。「この世界は、人族と魔族が争っている、とか、亜人族はそれに付き合わされてるだけ、とか」
    「ほうほう。君達はそれを聞いて、どう感じたんだい?」眼鏡を指で押し上げて、ミコトを正視するサボ。
    「どちらも損してるな、って思ったな」コックリ頷くミコト。
    「どちらも損してる、か」噛み締めるように呟くサボ。「不思議な事を言うね、君は」眼鏡の奥の瞳が、剣呑な輝きを放つ。「魔族は、斃すべき敵だ。彼らが生きてるだけで、人族が損してる、なら分かるが、魔族も損してると言うのは、些か理解に苦しむね。――いや、生まれてきた時点で損してると、そういう事かな?」
     ビクリ、とレンの肩が震えたのを、ミコトとマナカは見逃さなかった。クルガが心配そうにレンを見上げるも、彼女は若干青褪めた微笑を浮かべて、小さく首を否と振った。
    「その考え方が、損してるな、と思ったんだ」サボを見る視線に、冷気が入り込むミコト。「魔族は、魔力が有るだけの人族。人族は、魔力が無いだけの人族。たったそれだけの違いなのに、何で敵対視しているのか、俺にはそっちの方が理解に苦しむぜ」
    「……なるほど、ネイジェ=ドラグレイに逢ったと言うだけあって、不思議な物の考え方をするようだね、君は」驚きに目を瞠りながら、サボは座席に座り直す。「何で敵対視しているのか、理解に苦しむ、か……なるほど、なるほど……」
     俯いて沈思に入ってしまうサボを見つめながら、ミコトは静かに言葉を続けた。
    「魔族だから怖い、魔族だから憎い、って言ってる奴の方が、俺は怖いって思う」ちら、とレンを一瞥すると、彼女は真剣な表情でミコトを見つめていた。「人族にだって嫌な奴はいる。魔族だってそうだろう。だったら人族に良い奴がいるように、魔族にだって良い奴がいてもおかしくないんじゃないか?」
     ミコトの投げた言葉を咀嚼するような沈黙が降りた。
     サボは暫く身動ぎ一つせず、俯いたままジッと組んだ指を眺めていたが、やがて上体を起こすと、「――なるほど、君はやはり、ネイジェ=ドラグレイに逢うべくして逢った、と見るべきだろうね」と呟きを漏らした。
    「逢うべくして逢った?」意味が分からない、と反芻するミコト。
    「気を悪くしないで欲しいんだが、僕には君の言葉を正しく理解する事が出来ない」ミコトに向き直り、真剣な表情で続けるサボ。「僕は、魔族は悪しき存在だと、今も思っている。斃すべき対象であるとも。でも君は違うんだろう?」尋ねるも、すぐに小さく首を否と振った。「その考えは、人族にはない思想であると共に、今の人族を脅かす思想であるとも言える」
    「……」ミコトは黙ってサボを見つめ続ける。
    「いや、心配しないでほしい。ここでの発言は全て非公式だ、僕の権限で今すぐに、そして馬車を降りた後も、君達をどうこうする意志は無いよ。僕はただ、ネイジェ=ドラグレイに逢ったと言う人物の話を聞きたかっただけだからね」場を和ませるためだろう、柔らかな微笑を浮かべるサボ。「だから、礼を言わせて欲しい。……有り難う」
    「俺からも一つ、良いか」サボを見つめて、人差し指を立てるミコト。
    「ん? 何だい?」
    「どうしてそこまでネイジェに拘るんだ?」
     ミコトの質問に、サボは暫く沈黙を貫いたが、小さく鼻息を落とすと、静かに切り出した。
    「……彼は、ネイジェ=ドラグレイは、伝承によれば、この世界を管理している者、とされている」指を組み、その指に視線を落としながら続けるサボ。「その伝承とて多くが証明できてないし、半分以上は流言飛語だろう。僕は冒険者ギルドの纏め役として、冒険者を各地に派遣しては、伝承を証明する手掛かりを探し求めているんだ」
    「つーかよ、世界を管理って出来るもんなのか?」よく分かってなさそうに小首を傾げるマナカ。「神様なのか、ネイジェって?」
    「そういう伝承も残っている」マナカを見据えて頷くサボ。「そして冒険者ギルドでは、口伝で幹部だけに代々受け継がれている話に、こんな一文が有る」と言って、四人を代わる代わる見据える。「曰く、“ネイジェ=ドラグレイから依頼が来たら、内容問わず承諾せよ”――とね」
    「代々って、あいつもしかしてお爺ちゃんだったのか?」ミコトを見やるマナカ。「道理でお茶が美味い訳だな!」
    「そして今日……いや、もう昨日になるか。ヒネモスの街に届いた風ノ音鳥はネイジェ=ドラグレイからのモノだった。冒険者ギルドは右へ左への大騒ぎさ。まさか伝説のお方から風ノ音鳥が届くなんて、誰も予想だにしていなかったからね」
    「それで冒険者ギルドの纏め役なんて偉い人が、こんな辺境に派遣されてきたって訳ね……」話の規模に、思わず溜め息が漏れるレン。「あたし達、とんでもない人に逢ってたのね……」
    「みたいだな」他人事のように肩を竦めるミコト。「その話から察するに、風ノ音鳥には俺の名前が入ってたんだな」
    「その通り」ピッとミコトを指差すサボ。「ヒネモスの街で、ヨモスガラの山林に出没したオワリグマの退治の依頼を受けた、と聞いてね、行き違いにならないように、慌ててやってきた訳さ」
    「なるほどな」コックリ頷くミコト。「こんな話しか出来なかったが、満足してくれたか?」
    「あぁ、有意義な時間だったと思ってるよ」柔らかく微笑むサボ。「早朝にはヒネモスの街に到着する予定だから、それまでゆっくり寛いで欲しい。座席の上には毛布が用意してあるから、良かったら使ってくれ」
    「ありがとな」サボに小さく頭を下げるミコト。「だけど、折角だから俺は車窓を楽しませて貰うよ。馬車に乗る機会なんて、そうそう無いからな」
    「あたしもこんな豪華な馬車に乗ったのも、こんなふかふかな座席も、初めてだもん」と言って座席を撫でるレン。
    「外、真っ暗だね」車窓を覗きながら呟くクルガ。
    「夜だからな!」ビシッと親指を立てるマナカ。
     そうして銘々に楽しんでいたが、やがて夜が更けるに連れて話し声は無くなり、馬車が揺れる音が子守歌になる時間が訪れる。

    ■残りの寿命:26日
    【後書】
     ネイジェの設定はこの物語を綴る前から練っておりまして、いつかこの世界観の作品に登場させたいなーと考えていたら、早くも登場の機会を得て、こうして「余命一月の勇者様」に登場する事が叶ったキャラクターだったりします。
     世界の管理者。伝承に残る神様。何れこれらの設定を回収できる展開が綴れればいいのですが、「余命一月の勇者様」で明かされる事は……今のところ予定しておりません。その一端に触れる形で、何かしらの記述が出てくるかも知れませんが、その辺もお楽しみに頂けたらと思っております。
     と言う訳で4日目が終わり、次回、「美味しいモノって言えばアレだよな!?」……マナカ君が大好きなアレを食べたりするお話です。お楽しみに!
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    Comments

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    2017-02-11 07:28 
    日逆孝介 No.584
    > 更新お疲れ様ですvv
    >
    > ギルドの纏め役を慌てさせてしまうとは…
    > ネイジェさん、しゅごい人だったのですねぇvv
    > しかしそれ以上にすごい家族がいたとはw
    > レンさんがとってもいい感じです。なんかこう、やわらかくなった感じw
    >
    > 次回も楽しみにしてますよー やっぱ肉だろ肉!!

    感想有り難う御座いますー!

    そうなのです、しゅごい人だったのです!
    レンちゃんが少しずつ家族の色に染まりつつあるのは、綴ってる身としてもほんわかしてきます(´▽`*)

    次回もお楽しみにー! やっぱ肉だよな肉!!
    2017-02-11 01:30 
    tomi No.582
    更新お疲れ様ですvv

    ギルドの纏め役を慌てさせてしまうとは…
    ネイジェさん、しゅごい人だったのですねぇvv
    しかしそれ以上にすごい家族がいたとはw
    レンさんがとってもいい感じです。なんかこう、やわらかくなった感じw

    次回も楽しみにしてますよー やっぱ肉だろ肉!!
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