鎖錠の楼閣

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    【余命一月の勇者様】第14話 彼の成したい事、彼女の成したい事〈1〉【オリジナル小説】

    ■タイトル
    余命一月の勇者様

    ■あらすじ
    「やりたい事が三つ有るんだ」……余命一月と宣告された少年は、相棒のちょっぴりおバカな少年と旅に出る。

    ▼この作品は【鎖錠の楼閣】、【小説家になろう】、【ハーメルン】、【カクヨム】の四ヶ所で多重投稿されております。

    ■キーワード
    異世界 ファンタジー 冒険 ライトノベル 男主人公 コメディ 暴力描写有り

    ■第14話

    第14話 彼の成したい事、彼女の成したい事〈1〉


    「母さんはね、ミコトに頑張って欲しいから、頑張ったんだからね?」

     顔の半分に包帯を巻き、真っ青な顔色をして呟く母に、ミコトは泣き顔を浮かべて、目を逸らさないように、必死に彼女の顔を見続ける。
    「だから、ミコトが悲しんだら、母さんも悲しくなっちゃうでしょ?」
     ミコトの頭を、震える手で撫でながら、笑いかける母。ミコトは涙を零しながら、何も言えずに母の顔を見つめる事しか出来なかった。
    「ミコトは何も悪くない、いいね? 母さんが、ちょーっとドジ踏んじゃっただけなんだから。だから……自分を責めないで。母さんとの約束よ?」
    「でも……っ」
     ミコトは分かっていた。自分が熱の下がらない病気を患った事で、母はその病気を治すと言われる薬草を採りに出掛け、その帰りに事故に遭った。ならばこれは、自分のせいだと。
     母をこんな目に遭わせたのは、自分以外に有り得ないと、ミコトは苦しくて、辛くて、涙を流し続ける。
    「……ミコト。母さん眠たくなってきちゃった。だから、ミコトに託してもいい?」
     ミコトではない、どこか遠くを眺めながら、母は呟く。
     ミコトはそんな母の手を握り締めながら、コクコクと小さく頷く。
    「あの人……お父さんはね、きっとミコトを目の仇にすると思うけど、許してあげて。お父さんも、ミコトと同じ位悲しんで、苦しんでる筈だから。だから、ワガママを言っても、聞いてあげて欲しいの。出来る?」
    「……うん……っ」確り首肯を見せるミコト。
    「流石は母さんの子ね!」嬉しげに微笑む母。「……ミコト。母さんの口癖、思い出せる?」
    「……うん、思い出せるよ」歪んだ視界を正そうと、目元を拭うミコト。
    「じゃあ何も心配無いわね。……ほら、ミコト、笑ってよ。母さんが寝る前に見る顔が、そんな泣き顔だったら、安心して眠れないじゃない」苦笑を浮かべてミコトを抱き締める母。
    「……笑える訳、無いだろ……ッ」
    「もう。……そうよね、笑える訳、無い、か……。でもね、母さんは…………」
     フッと、母の手から力が抜け、声も聞こえなくなった。
     ミコトは歯を食い縛って泣き続けた。
     笑顔なんて、見せられる訳が無いと思った。でもその時ミコトは、凄く後悔した。
     眠る前の母に、どうして笑顔を見せられなかったんだろうと、ずっと後悔し続ける事になった。

    ◇◆◇◆◇

    「……大丈夫?」
     つぅ、と目元から耳に向けて涙が流れて行く感覚と共に、眼前にレンの顔が映り、ミコトは一度瞑目すると、ゆっくりと起き上がった。
    「怖い夢でも見たの?」
     ミコトの隣に座り込みながら、レンが心配そうに話しかけてくる。近くにマナカとクルガはいないみたいで、部屋は静寂に満ちていた。
    「……懐かしい夢を見てた」目元を擦りながら応じるミコト。「昨日、話をしたから思い出したのかもな」
    「……もしかして、お母さんの夢……?」
     振り返ると、レンは一瞬戸惑ったような表情を浮かべ、視線を逸らした。
    「……ごめん、詮索するつもりは無いの、忘れ――」「あぁ、母さんの最期を看取る夢だったよ」レンの言葉を遮るように、淡々と告げるミコト。
     レンは胸が苦しそうな表情でミコトを見据えると、「そっか」と小さく返した。
    「マナカとクルガはどこに行ったんだ?」掛けてあったタオルを畳んでソファの上に戻すと、ミコトは立ち上がって伸びをする。
    「テーブルの上に手紙が置いてあったんだけど、それ見て出て行っちゃったわ」と言ってレンはテーブルの上を指差す。
    「手紙?」ミコトが振り向くと、確かにテーブルの上には破られた封筒が置いてある。恐らくはマナカが中を検めただろう便箋も一緒に。「これか」
     手に取り、中身を検めていく。

    『不思議な四人組へ

     俺は本来、この小屋に戻る予定は無かったんだが、何と無く立ち寄ってみようと思ったら、お前達がいたんだ。
     元々俺は人族にも亜人族にも魔族にも肩入れしたくない立場でな、こう綴るとその立場に対して不誠実と言うか不義理な感じがするんだが、お前達に肩入れしたくなった。
     そこで、昨日ミコトが採取してきた火の花はお前達にプレゼントする。希少価値の有る薬草だから、街で売却すれば良い値段が付く筈だ。それを旅費の足しにすると良い。
     あとこれは俺からのお願いなんだが、火の花を採取した場所、及びこの小屋に就いては誰にも伝えないで欲しい。本来俺は外部の者と接触できない立場なんだ、俺の言葉が理解できなくても、どうか無理にでも納得して欲しい。
     最後に、この小屋からお前達人族が活動している領域までの案内を用意してある。帰りはその案内に付いて行けば外に出られる筈だ。
     俺に出来る事はこれぐらいだ。もう逢う事は無いだろうが、お前達の幸せを彼方より祈る。

     筆、ネイジェ=ドラグレイ

    ・追記
     昨日は俺の話を聞いてくれて楽しかったよ、ありがとう。ミコトの話も大変興味深いものだった、聞かせてくれて本当にありがとう。』

    「……お礼、言いそびれちまったな」
     便箋を丁寧に折り畳みながら呟いたミコトに、レンも同調するように「そうね、あたしもちゃんとお礼言いたかったわ」と苦笑を滲ませる。
    「ミコトぉーっ!」立て掛けてあるだけの扉を吹き飛ばして部屋に戻って来たマナカに、二人の視線が向く。「迎え来てるぞ!」
    「そうだ、案内が来てるんだったな。どんな奴なんだ?」ゆっくりとマナカの元に向かうミコト。
     扉をずらして外に出ると、そこにはクルガと一緒に走り回るオワリグマの姿が見受けられた。
     肩に若干赤黒い痕が残っている、オワリグマ。
    「ミコト! 昨日のオワリグマさん!」クルガがトテトテとミコトに向かって走り寄って来た。「外まで案内してくれるって!」
    「グォウ」ミコトの元まで駆けてきたオワリグマは、彼の前でぺたんと頭を地に付けて、彼を見上げる。
    「昨日は有り難う、って言ってる!」オワリグマの隣に立って、ワシャワシャとオワリグマを撫でながら告げるクルガ。
    「もう肩の傷は良いのか?」オワリグマと視線を合わせるようにしゃがみ込むミコト。
    「ウォ……ウ」目を細めて、クルガに視線を向けるオワリグマ。
    「何て言ってる? って言ってる!」オワリグマを撫でながら告げるクルガ。
    「じゃあさっき俺の言った言葉を、オワリグマに伝えて貰っていいか?」ポン、とクルガの頭を撫でるミコト。
    「分かった! ――――」不思議な音色で喉を震わせるクルガ。
    「ォウ、ウオ、ゥゥ」オワリグマは再びミコトに視線を転じ、目を細めた。
    「今は痛くない、治療してくれて有り難う、って言ってる!」ふんふんと鼻息の荒いクルガ。「レンに、有り難うって言ってる!」
    「でも、赤い染みが出来ちゃったわね」オワリグマの肩を見つめながら呟くレン。「――そうだ。ちょっと待ってて、今タオル濡らしてくるから」
     パタパタと小屋の中に戻ったかと思うと、すぐに濡れたタオルを持って現れるレン。伏せたままのオワリグマに近づき、濡れたタオルを赤い染みに当てて、ゴシゴシと擦る。
    「よし、少しは綺麗になったんじゃない?」タオルが赤く汚れたが、オワリグマの肩口から染みが取れて元の毛並みが見えるようになっていた。「あたしこそお礼を言わせて。ネイジェの元まで案内してくれたんでしょ? ありがとね」と言って、恐る恐ると言った態でオワリグマの頭を撫でるレン。
    「クルガ、今のも翻訳してあげてくれ」透かさずクルガに向き直るミコト。
    「分かった! ――――」
    「グォウ」目を細めたまま、レンに向き直るオワリグマ。
    「昨日は有り難う、って言ってる!」
    「……話、通じてる……?」
     思わず苦笑を浮かべるレンなのだった。

    ◇◆◇◆◇

    「案内はここまでだ、って言ってる!」
     ヨモスガラの山林を、オワリグマを先頭に歩き続けた四人だったが、不意にオワリグマが振り返って伏せ、呟いた言葉をクルガが翻訳してくれたのを機に、四人は銘々にオワリグマの頭を撫でていく。
    「助かったよ、ありがとな」と言ってオワリグマの頭を小さく撫でるミコト。
    「お前のお陰でレンが助かったんだぜ! ありがとな!」オワリグマを抱き締めるマナカ。
    「オワリグマさん、有り難う!」オワリグマの手の爪を小さく握るクルガ。
    「お陰で助かったわ、ありがと」オワリグマの肩を小さく撫でるレン。
     オワリグマは目を細めると、すっくと立ち上がり、四人に小さく手を振ってから、山林の奥へと戻って行った。
     その後姿を見送っていた四人は、「よし、帰るか」と言うミコトの声に呼応するように、誰とも無く歩き出す。
     昼下がりの山林は木漏れ日が眩く、野鳥や虫の鳴き声が辺り一面に響き渡っていた。ミコトとマナカが樹木に付けられた傷痕を確認しながら、クルガとレンに合わせた速度でゆっくりと進んで行く。
     日が傾き始めた頃、ヨモスガラの山林の外が見えてきた。斜陽に照らされた山林は橙色に染め上がり、幻想的な色彩で四人を見送っていた。
    「今日はここで野宿だな。皆、また枯れ木を集めてきてくれ」と言って荷物を傷が付けられた樹木の傍に置くミコト。「こないだと同じ二人一組で探そう」
    「おうよ! クルガ、行くぞ!」と言ってクルガの背中を叩くマナカ。
    「けほっ、うんっ!」背中を叩かれた瞬間咳き込んだクルガだが、元気よくマナカの後ろを追って行く。
    「じゃあレン、行こうぜ」と言って歩き出したミコトに、レンは「うん」と小さく返して追ってきた。
     夕暮れに染まった静かな山林の中で、中腰で枯れ木を集める二人。
    「なぁレン」不意にミコトが呟きを漏らした。「火の花、アレをお前にプレゼントしようと思うんだけど」
    「え?」思わずと言った様子で立ち上がるレン。「何で?」
    「希少価値の有るモノってネイジェが言ってただろ? アレを土産にすれば、見習い盗賊じゃなくて、本物の盗賊になれるんじゃないか?」
    「……」
     レンからの返答はすぐには無かった。静寂が山林に落ちたが、ミコトは更に言葉を連ねるような真似はしなかった。
    「……ねぇ、ミコト」小さく、レンが呟く。「あたしね、やりたい事が出来たんだ」
    「やりたい事?」ゆっくりと中腰から上体を起こすミコト。「盗賊になる事よりも、大事な事なのか?」
    「……うん。だから、ミコトが叶えたい事の一つは、きっと当分叶わないと思う」ミコトを正面から見据えて告げるレン。「だから、その……ごめん」
    「何で謝るんだ?」不思議そうに小首を傾げるミコト。「だったら俺は、レンのそのやりたい事を応援するだけだぜ。レンが頑張るのなら、な」
    「……あたしのやりたい事を聞きもせずに、応援できるの……?」
     レンのジト目に対して、ミコトは気にした素振りも見せずにあっけらかんと応じた。
    「俺が応援できないような事を、レンがやりたい事にするとは思えないからな」
    「……」堪えるように瞑目し、脱力するように嘆息を落とすレン。「……本当に人が良いって言うか、よくそんな生き方で今まで生きてこられたわね、あんた……」
    「母さんが、それだけ凄い人だったって事さ」肩を竦めて苦笑を浮かべるミコト。
    「きっとあんたの事だから、訊かないんでしょ? あたしがやりたい事」
    「レンが話したい時に話してくれたらいいさ」
    「言うと思った!」ピッとミコトを指差すレン。「だから、今言うわ。あたし、ミコトの寿命が尽きるまで、ミコトの傍にいる。寿命が尽きるまでにミコトを幸せにするのが、あたしが今、盗賊になる事よりも、やりたい事よ!」
     言ってから恥ずかしくなったのだろう、レンの頬は徐々に紅潮していった。
     ミコトは虚を衝かれたような表情を浮かべて、レンを見つめる事しか出来ない様子だった。
     二人が見つめ合う、もどかしい沈黙が場に降りる。
    「……な、何か言いなさいよ!」思わず喚くレン。
    「いや、済まん。ちょっとビックリしてな」首の後ろを掻くミコト。「そんな事を言われたの、初めてでさ。ちょっと……いや、だいぶ戸惑ってる」
    「……ふふん、ミコトを初めて戸惑わせてやったわ」どこか誇らしげに胸を張るレン。「あんた、今でも誰かの事を応援しようって考えてるんでしょ? だったらあたしは、そんなミコトを応援する。ミコトだって、ミコトが応援する人のように、頑張ってるんだし、応援されるべきだし、幸せにならないと、いけないのよ」
     ミコトはレンをまじまじと見つめた。興味深そうに、不思議そうに、ジッと、レンを見つめる。
    「な、何よ? あんた応援するって言ったでしょ? だったら、あたしのやりたい事も、応援してくれるのよね?」恐る恐ると言った態で尋ねるレン。「男に二言は無いわよね?」
    「……そうだな、男に二言は無い、な」枯れ木を集めて歩き出すミコト。「レンがやりたいのなら、頑張りたいのなら、俺は止めないし、応援する。だから……ありがとな、レン」ポン、と通り過ぎながらレンの頭を撫でていく。
     それは遠い或る日、母に直接は言われなかったが、本当は母が言いたかった事なのではないか、とミコトは考えてしまった。
     黄泉路に発った母は、自分の幸せを望んでいる。その事に気づいていなかった訳ではない。ただ、目を向けようとしていなかった。
     自分の寿命は、あと一ヶ月を切っている。その一ヶ月で、自分を幸せにすると明言したレンに、思わず微苦笑が浮かぶミコト。
     何故なら、――――もう、幸せだからだよ、と、口を開きかけたが、やめた。
     彼女は納得しないだろうか、逆に納得してしまうだろうか。どちらにせよ、その時彼女の願いは果たされてしまう。その時自分はどう思うのか、そこまで想いを馳せる事を、何故かミコトは忌避した。
     自分を想ってくれている人がいる。それだけで、ミコトは幸せを感じている。だったら、例えそれが一ヶ月の間だけでも続くのなら、そうしたいと思うのは、ワガママだろうか。
     自由に生きるとは、どういう事なのだろうと、ミコトは考えに耽ったまま、枯れ木集めに没頭するのだった。
    【後書】
     誰かが眠る時に笑顔を見せられるのか。見せられなかったら後悔すると分かっていても、見せられる自信は無いです。
     ミコト君のお母さんは凄い人と言うイメージで綴っておりますが、それが理由でミコト君も凄くなった、とは考えていません。ミコト君は、ミコト君だから、ミコト君になった、と言って伝わるのかどうか。
     どんな過去が有っても、どんな道筋を辿って来ても、凄い人になる人は凄い人になりますし、困ったさんになる人は困ったさんになる、と言うのがわたくしの持論なので、ミコト君はそういう魂を有していたのではないかな、と思っております。
     次回、彼の成したい事、彼女の成したい事〈2〉……お楽しみに!
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    Comments

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    2017-01-23 18:26 
    日逆孝介 No.555
    > 更新お疲れ様ですvv
    >
    > 「ミコト君は、ミコト君だから、ミコト君になった」 よーーくわかります。
    > なにせ彼は勇者の器ですからvv
    > 読んでいる最中はなんとか我慢してた涙ですが、
    > 後書を読んで、ミコト君のアイコンを見た途端ダバーっとw
    >
    > 次回も楽しみにしてまーすvv

    感想有り難う御座いますー!

    分かって頂けた……! 嬉しい……!。゚(゚^ω^゚)゚。
    そう! 勇者の器ですからね!w
    その涙はとても温かいものであったと、わたくし確信しております……!

    次回もお楽しみにー♪
    2017-01-23 18:10 
    tomi No.554
    更新お疲れ様ですvv

    「ミコト君は、ミコト君だから、ミコト君になった」 よーーくわかります。
    なにせ彼は勇者の器ですからvv
    読んでいる最中はなんとか我慢してた涙ですが、
    後書を読んで、ミコト君のアイコンを見た途端ダバーっとw

    次回も楽しみにしてまーすvv

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