鎖錠の楼閣

    一次&二次の小説やネトゲやゲームの記録記事を更新してるブログ

    Home > 戦戯(再掲版) > 【戦戯】 EX04.もしもヴェルドさんが内心めっちゃビビってたら【オリジナル小説】

    【戦戯】 EX04.もしもヴェルドさんが内心めっちゃビビってたら【オリジナル小説】

    ■タイトル
    戦戯

    ■あらすじ
    遠い未来。戦争が当たり前のように行われる荒廃した世界で、或る男に一本の電話が入る。「君にゲームをして貰いたいんだ」……それが悪夢の始まりだった。――ひょんな事からチームを組んだ四人の男女の、狂れたゲームの物語。

    ▼この作品はブログ【鎖錠の楼閣】、【小説家になろう】(http://ncode.syosetu.com/n3582cz/)、【ハーメルン】(http://novel.syosetu.org/73083/)、サークルサイト【風雅の戯賊領】(http://huuganogizoku.web.fc2.com/)、【カクヨム】(https://kakuyomu.jp/works/1177354054881703366)の五ヶ所で多重投稿されております。

    ■キーワード
    R15 残酷な描写あり 戦争 ライトノベル 銃撃戦

    ■第32話

    EX04.もしもヴェルドさんが内心めっちゃビビってたら


    ※警告※この物語は【戦戯】のパロディであり、本編とは一切関係有りません※
    ※警告※この物語を読まなくても本編には差し障り有りません、本編だけを愉しみたい方は飛ばして頂いても全く構いません※


    ◆シーン001.開宴その1

     吸い込まれるような鮮血色の虚空に意識が奪われ、少年は刹那に覚醒した。
     僅かなタオルケットを跳ね除けて起き上がった少年――否、“男”は臓腑を掻き回す程に醜悪な悪夢が現実ではない事を今一度確認すると、重苦しく嘆息を吐き出した。
    「……またあの夢か。……いや、夢じゃない、か」
    (あぁー夢で良かった……本当に勘弁して欲しい……久し振りに観たぞこの悪夢……もうやだ……忘れたい……)
     銀色の髪をクシャリと混ぜるとベッドから立ち上がり、水でも飲もうと部屋を出ようとして――違和感に襲われた。
    (えっ、何か嫌な予感がして堪らないんだけど、これなに? なにこれやだこわい。えー……もー……やだなぁ……私の悪い予感って当たるんだよね……これ絶対にヤヴァい奴だって……えー……)
     ――その時だ。己の持ち物である携帯電話が機械的な音を発し、着信を知らせ始めた。別に着信音には気を回さない彼の携帯電話である、無機質なベルの音で早く出ろと急かしてくる。
    (うわっ、うわっ、ビッ、ビビったーッ! ちょっ、脅かさないでくれよほんと! うわぁー……チビるかと思ったガチで……ちょっ、ほんと勘弁してよー……大丈夫かな、チビってないよね私……?)
     男は頭の中で未だに消えない警鐘の根源がそこに有ると認識したのか、数瞬出るのを躊躇したが、三十秒が経過しても一向に鳴り止まない携帯電話に嘆息を落とし、非通知である事を確認してからボタンを押した。
    「お早う、ヴェルド君」
     聞き覚えの無い男声を受信し、男――ヴェルドは醒めた表情のままベッドに座り直した。
    (誰だこいつーッ!? え、私の知ってる人!? じゃない、よ、ね……? 聞き覚えないよ、この人!? うぇー……誰だろう、前の部隊にいた時こんな声の人いた、っけ……? うわー思い出せない、いや、そもそも知らない人だよね、この人? 怖いよー! 知らない人からの電話怖いよー!)
    「……この番号を誰に聞いた?」
     近くに手荷物を引き寄せ、愛銃――“アネモス”と言う名の年季が入ったポンプアクション式ショットガン――を取り出すと、携帯電話を耳と肩で押さえ、両手を使って散弾を装填していく。
    (うぁー手がプルプル震えちゃう……落ち着いて私! 落ち着いて、ゆっくり……そう、その調子! その調子で弾丸を詰めるんだ私! こうしてる内に段々落ち着く筈だから……!)
    「おや、私が誰かと言う質問はしないのかね?」電話越しの相手は剽げた態度で笑うと、「君が気にしないのであれば、こちらもそのつもりで話をしようじゃないか。――君に一つ、仕事を依頼したい」
    (うわぁーん! やっぱり知らない人だったー! 誰だよこの人ー! もうやだー! 怖いよ怖いよ! 電話番号変えよう、そうしよう! 今の番号知ってる人あんまりいないし、うん、早く電話番号変えよう!)
    「……話が通じないようだな。この番号を誰に聞いた? そして貴方は何者だ?」
     言動とは裏腹に淡々と応じながら、ヴェルドは手早く身支度を済ませていく。アネモスに六発の散弾を装填し終えた彼は背中のベルトに手挟み、携帯電話をフリーハンズモードに切り替えて紅のロングコートを羽織る。
    「ふむ、やはり私が誰か気になるのかね」男……否、声質を鑑みれば少年と言うべき幼い声なのだが、その老成した言動がヴェルドに違和感を与えていた。「仕方ない。君の質問に答えなければ話が進まないのであれば、答えるのも吝かではないんだ。まず一つ目、誰にこの番号を聞いたかだが、傭兵ギルドの内通者から教えて貰った。次に二つ目、私が何者かだが、何れ君の雇い主になる男としか答えられないな。――これで結構かな? では早速本題に入らせて貰おう」
    (うぇえ……これ絶対危ないお仕事だ……受けたくないよー怖いよー何とかして断れないかなーやだよー受けたくないよー怖いよー)
     ごり押し気味に話を進める男声に、ヴェルドは部屋のドアを開けながら応じる。「……そんな胡散臭い奴の依頼など受けられないな。別の奴を当たってくれ」
    「連れない事を言うじゃないかヴェルド君」声変わりもしていない少年の声だが、そこには老獪な色がありありと浮かんでいた。「依頼を受けないのかね? 私の依頼を無碍に断ると、そういう事かな?」
     ドアを開けた瞬間、眼前に拳銃を構えた男が目に入った。
    (うッッわぁぁぁぁッッ!! ビッッッックリしたぁぁぁぁ――――ッッ!! ちょッ、なんッ、何この人ッ!? 何で私の部屋の前に立って拳銃構えてるの!? ちょッ、あッ、……ちょっ、ちょっと、チビっちゃったかも……)


    ◆シーン001.開演その2

    「不躾な真似をして申し訳ない、ヴェルドさん」スキロスを構えたまま仮面の男――ジャッジメントはくぐもった声で呟いた。「早速だが移動を始めよう。モーテルの外で今、あんたの仲間となるプレイヤーが待ってる。合流し、簡単な紹介を受けて欲しい」
    (ふえぇ……どうしてこうなった……やだなぁ、結局受けちゃったけど、絶対に碌な依頼じゃないよこれ……何だよゲームって……やだなぁ……何とかして今からでも断れないかなぁ……)
     スキロスを構えたまま微動だにしない男を見据えて、小さく肩を竦めるヴェルド。彼の脇を通り抜けて部屋を後にすると、背後からジャッジメントが付いて来る気配がした。
    (ひいぃ……ピッタリくっついてくるよー! これ、この人あれじゃないよね、ホモォ……じゃないよね!? いきなり背後から襲われないよね!? 怖いよ怖いよ! さっきチビったのバレてないよね!? うわぁー後ろ振り向きたくないのに振り向きそうになるよー!)
     足音も無く追跡してくる気配に辟易しながらも、ヴェルドは淡々とした足取りでモーテルを後にし、表通りへと出る。そこに滑り込むようにして黒塗りのワゴン車が停車した。一面スモークガラスになっているワゴン車の助手席のウィンドーが開き、女が顔を出した。
     かなり白に近いシルバーブロンドの髪に、アイスブルーの瞳を有する白人だ。童顔で幼く見えるが、恐らく歳は二十代前半と言ったところ。青の付け毛を下ツインテ風に付けている。
     首に白っぽい色の長いマフラーを巻いた女は、ヴェルドと視線を合わせた瞬間、人懐っこい笑みを浮かべて後ろの座席を示した。
    「アナタがヴェルドサン……デスヨネ? さっ、乗るデスヨー♪」
    (こ、こんな年端もいかない女の子までゲームをさせられてるのか……!? 併も名前知られてるし! う、うわぁー! これもう引き返せないフラグじゃないかー! どうしよう、どうしようー!)
     そう女が告げると同時に後部座席のドアがスライドし、奥で学者風の男がここに入るようにと体をずらしたのが見えた。
     青みがかった黒色の瞳に、微妙にくせ毛で少し長い黒髪。肌の色はやや白めだが、東洋人と思しき色合いをしている。こちらも童顔で、十代後半に見えなくも無いが、実年齢はもっと高いのだと推測できた。纏っているのはよれよれの白衣と言う、ともすれば場違いとも思える格好をしている。
    「ささっ、遠慮せず入りや~」と訛りの有る声で招き入れる白衣の男。
    (何でこの人達こんなにフレンドリーなの!? もしかして私一人だけ勘違いしてるのか!? 依頼って言うのは、戦闘系のお仕事じゃなくて、風俗系のお仕事なのか……!? そ、それはそれでやだなぁ……相手の嘘解っちゃうしなぁ……)
     背後から仮面の男にせっつかれて止む無く乗車したヴェルドは、白衣の男の隣に腰を下ろした。仮面の男は最後尾の席に収まり、ドアが閉まると同時にワゴン車は音も無くモーテルを後にした。
    「ルールをご説明する前に、軽い自己紹介をして貰えるかな」
    (自己紹介……!? このジャッジメントさんがしてくれる訳じゃないのかー! ちょっ、緊張するんだけど、大丈夫かな、ちゃんと名前言えるかな……ドキドキするよー!)
     背後で上がったジャッジメントの台詞に反応し、視線だけを白衣の男に向ける。
    「ん? 僕から?」緊張感の無い態度で自分を指差す白衣の男。「僕の名前は刃蒼瑞賢。研究者の端くれや。よろしゅうな~」そう言って長閑な微笑を浮かべる。
    (あ、この人良い人だ。間違いない! 優しそうだし、穏和そうだし。良かった~話が通じそうな人が一人でもいると違うんだよな~ホッとした~)
    「じゃあ次はボクの番デスネー?」助手席から振り返ってヴェルドを見据える白人の女。「ボクはマーシャ・チェルニャフスカヤ。こう見えてボク、ニンジャなんデスヨー! でもでも、気軽に“ニャフちゃん”と呼んでくれて良いんダヨ?」と握手を求めてきた。
    (ニャフちゃんは流石に素面では呼べないか、な……変わった娘だけど、ゲームって何をさせるつもりなんだろう……こんな年端もいかないような娘にまでさせるって事は、何か碌でもないモノのような気がしてきたぞ……)
    「……私はヴェルド。宜しく頼む」そう言って握手に応じるヴェルド。
    (あっ、あっ、名前ちゃんと言えなかった! つっけんどんになっちゃった! これじゃ第一印象悪く観られちゃいそうだよ~! どうしよう!? もう一回言った方が良いかな? でもそしたら変な人に思われちゃうかな!? うぅ~……いきなりドジっちゃったよう……)
    「――それだけか? 名前しか判らねえじゃねえか」
     ヴェルドの声に反応したのは運転手だった。バックミラーで確認すると、三白眼の黒瞳と、ショートヘアーの黒髪、そして肌の色から東洋人である事が判る。歳は十代後半に見え、ヴェルドは己以外が皆一回りほど年下なのだと察した。あくまで“外見上は”、に留まるが。
    (ほらきたー! 変な子に絡まれちゃったよー! うえぇ……どうしよう、怖いなぁ、若い子だからなに言い出すか判らないし……あんまり怒らせないように、穏便に返したいなぁ……えぇと、えぇと……)
    「そういう君もプレイヤーなのか?」白人の女――マーシャから手を離して、バックミラー越しに見据えるヴェルド。
    「あぁそうだ」つっけんどんに応じる少年。「俺は臥堂征一。傭兵だ」
    「ボクも傭兵なんデスヨー」再び助手席から振り返って笑むマーシャ。
    「……なるほど。同業者と言う訳か」(良かったー! 同業者の方だった! これなら話も通じる筈! こんな若い同業者は初めてだけど、ホッとした~! あぁー良かった……どうなる事かと思ったけど、やっぱりこれ、傭兵の依頼なんだな、うん。なら、きっと大丈夫だ! ……大丈夫、だよね?)
    「自己紹介はそれだけで構わないか?」最後尾の席で仮面の男がポツリと呟いた。
    (あっあっ、えぇと、えぇと、他に何か言う事は……! えぇと、えぇと……!)
    「あ、あとっ、アニメとかゲームが好きデスヨー!」慌てて付け足すマーシャ。
    (あっ、私も私も! 私もアニメとかゲーム好き! この人とは趣味が合いそうだっ! えっと、えっと、)
    「おー、僕もアニメとゲーム、どっちも好きやで?」相槌を打つ刃蒼。「なんや、こないなところでそないな話が出てくるとは思わんかったわー。今どんなアニメ観とるん?」
    (ぉお! この人とも話が合いそう! 私も思わなかった! こんなところでアニメトークが出来るなんて思いもしなかった! えへへ、よし、じゃあ私の最近観てるアニメの、プリキャワの話を――)
    「最近観たのはスマイルプリキャワデスヨー!」勢いよく振り返って刃蒼を見据えるマーシャ。その青い瞳はキラキラと輝いているように見えた。「もうみんなキャワワ過ぎてキャワワなんデスヨー! キャワワ! 変身シーンもとっても可愛くてデスネ、観ていてホワー! ってなるのデスヨー♪ あ、でもクッキーは好きじゃないんデスヨネー。何かウザいって言うか、アレだけは許せないのデスヨー!」
    「ごめん、何言うとるんか全然分からへんわ♪」ニッコリ笑顔で応じる刃蒼。
     間。
    (……やっぱり、プリキャワの話は、しないでおこう、うん……したかったけどなぁ……はぁ……)
    「……では、本題に入らせて貰って、いい、か……?」凄くやり難そうに尋ねるジャッジメント。


    ◆シーン001.開演その3

    「テメエら――ッ!!」癇癪を起こし掛けている臥堂はその制止を振り切ろうとして――腹に重く響く重低音に四人ともが動きを止めた。
     冷静に考えなくとも判る。音源は大学の方角であり、爆薬が炸裂した爆発音に相違無かった。
    (ビッ……ビックリしたぁ……心臓バクンバクン言ってるんだけど……し、心臓に悪過ぎるよ……! この臥堂って子は滅茶苦茶だし、あぁもうこれ絶対に最悪な依頼だ……)
     四人の視線が咄嗟にスモークガラスの向こうに向き、刃蒼は咄嗟にウィンドーを開けた。ゆっくりと下がっていくウィンドーの先から、混乱した学生が音源を見たまま固まっている姿が飛び込んでくる。
    「……ゲームは始まった」肩を撃ち抜かれながらも、ジャッジメントは荒い呼気を落としながら話を再開した。「ディスクはリムーバブルディスクの事だ……色は黒。表面に赤く光る塗料でXのサインが描かれてる。……そのディスクを狙っているのはお前達だけではない、“敵プレイヤーも同様にディスクを狙っている”」肩を押さえて細い気息を吐き出す。「……武装は大学の正門に立つ男が手渡す手筈になってる。……尚、この車両は目的地に到着して十分弱で爆発する。急いで出なければ、ゲームを始められないまま揃ってゲームオーヴァーになるぞ?」
    (うわぁー! 正気じゃないよこの人ー! 怖い怖い! どうしてこんな異常者の依頼受けないといけないの私!? 帰りたい! 切実に帰りたい! 帰ってもう一眠りしたい! あと……パンツ…………変えたい…………)
    「――そりゃアカン」仮面の男の発言を疑う素振りすら見せずにスライド式のドアを開け、最後尾のジャッジメントに手を差し出す刃蒼。「ジャッジメントさん、一緒に逃げな。ここで死ぬように言われとる訳や無いんやろ? はよ降りな」
    「付き合ってられっかよ――ッ!!」慌てて運転席のドアを開けて外に転げ出る臥堂。「おい急げ!! 十分ってもうタイムリミット過ぎてんじゃ――」
    「ほわわ、ほわわっ」慌ててシートベルトを外して助手席から脱出するマーシャ。「ヴェルドサンも急ぐデスヨー!」
    (わ、私も急いで外に出たいのに……! こ、腰が抜けて、動けない……! ちょっ、待って! 私も脱出したいの! 置いてかないで……っ! この異常者と一緒に残さないで……!)
    「……行かないのか?」苦しげな吐息を落としながらヴェルドに視線を向けるジャッジメント。「ここで自分と心中するつもりなら、止めないが」
    (やだー! そんなのやだー! 私死にたくない! 死にたくないよう! 腰が抜けてるんだってば! ちょっ、待ってよ! まだ爆発しないよね!? まだ時間有るよね!? 今出るから! 今出るから!!)
    「……貴方が死ぬ事まで、依頼の範疇なのか?」
     彼は仮面の奥でくぐもった嘆息を落とした。――諦観を感じさせる、疲れにも似た溜息を。
    「……自分にはルール以外の台詞を口にする権限は与えられていない。自分の役目はここで終わりなんだ。……さぁ、早く行ってくれ。仕事を確り完遂しないと、報酬は得られないんだからな」
    (ヤヴァいよー! この人頭おかしいよー! 普通生きて報酬貰うもんでしょー!? 死んだら終わりなんだよ!? この人頭逝っちゃってるよー! もうやだー! 帰るー! こんな人の依頼受けたくないー! うわぁーん!)
    「刃蒼さんも、自分には構わないで欲しい」視線を反対側に向け、ジャッジメントは告げる。「死にたくなければ、離れてくれ」
     刃蒼は難しい表情をしたまま何かを堪えるようにジャッジメントを見据えていたが、やがて観念したように距離を取る。
    「……有り難う」そう言ってジャッジメントは四人が離れた事を確認すると、徐にスーツの懐から小さな装置を取り出した。それを起動した瞬間、ワゴン車は刹那に橙色の光に包まれ、――轟音と共に四散した。
    (ッッ!! ちょっ、本当に爆発した!! あっ……また……チビッ…………)
     交通の量が多い昼間の四車線の隅で、突然ワゴン車が爆発炎上したのだ、野次馬が集まってくるのも無理からぬ事だった。
     遠くからは民警のサイレンの音が聞こえてきている。ここに留まっていれば何れ拘束されるかも知れない。
    (ああぁ……もう民警沙汰確定だこれ……最悪だ……私が何をしたと言うの……顔を覚えられていないよね……? ってこれもう爆弾魔扱いになってない……!? い、嫌だーッ!! まだ刑務所に送られるのは嫌だーッ!! うぇーん死にたくないよぉぉぉぉ!!)
    「ここで降りたら多分殺されるんやないかなぁ。誰にかは知らへんけど」
     コッソリ逃げようとしていた臥堂の背に、比較的大きな声で独り言を呟く刃蒼。
    「そうデスネ……ジャッジメントサンの死を無駄にしないためにもっ、ボクタチがガンバらなくちゃデスヨネ!」
     更にその背に追い打ちを掛けるようにマーシャが勢い込んで呟くのが続いた。
    (ああぁ!! あのガキ勝手に逃げようとしてる!! 許さない!! 私の方が先に逃げたいのに!! 絶対に許さない!! 道連れ……道連れにしないと……!! 私だって死にたくないんだぞおおおお!!)
    「ここまで言われて引き下がるような奴は、どうかしてると思うがな」
    「~ッ、わァーったよッ、やればいいんだろやれば!?」振り返って速足で戻ってくる臥堂。「お前ら憶えとけよ!?」と三人を次々に指差して吼える。
    (よしッッ!! 一人だけ逃げようなんて甘いんだよ!! 私から逃げようなんて絶対に許さないんだから!! ふふ、ふふふ……私一人で死ぬなんて嫌なんだからね……? 死ぬ時は一緒だよ……?)
    「判ったならそれでいい。――始めるぞ」
    (そう、まずは着替えをするために変装する必要性を生じさせなければならないな……そうだな、すぐにこの大学は民警に包囲されるだろうし、脱出のタイミングで民警に変装すれば、この若干湿ったパンツをチェンジできる! そこに到るまでのルートを検索しよう――――)
     この理解に苦しむゲームは、恐らく逃げられない類いの悪夢だ。ならば立ち向かい、勝てばいい。それだけの話だ。
     そうしてヴェルドの――四人の長い悪夢の物語は、開演を迎えたのだった。


    ◆シーン007.脱離

    「お前もここで着替えるのかよ!?」
     白い肌を晒すマーシャに、思わず赤面して顔を逸らす臥堂。刃蒼が「そりゃそうやろ、時間無いし」とニヤニヤ笑いながら応じ、ヴェルドも「喚く暇は無い、早く着替えてくれ」と素っ気無く告げる。
     半裸状態のマーシャが「何か問題でも?」と言わんばかりにキョトンとしているのが、臥堂の中で更にモヤモヤに変換され、結局彼女に背を向けて着替えを再開する。それを刃蒼はニヤニヤと見つめていた。
    「こんな事で動きを鈍らせるな」嘆息混じりにぼやくヴェルド。「マーシャさんですら羞恥心を殺せてるのに、君と言う奴は……」
    「うるっせェ! 黙ってろ!!」赤面したまま急いで着替える臥堂。「クソッ、まるで俺がおかしいみたいな言い方しやがって……ッ!!」
    「マーシャさん、ホンマに忍者なんやなぁ。太腿にクナイなんて付けとるで」興味深げにポツリと独語を零す刃蒼。
    「クナイは忍者の嗜みデスヨ!」半裸のまま胸を張るマーシャ。「あと煙り玉も有ってですね……」ゴソゴソと浴衣の中から小さな球体を取り出し始める。
    「何でもいいからさっさと着替えろ!!」カンカンの臥堂だった。
    (……よしっ! バレてない!! パンツも一瞬で変えた!! もうこれで大丈夫だ!!)
    (((どうして下着まで着替える必要が有ったのヴェルドさん……?)))
    関連記事

    Comments

    post
    2017-01-09 13:32 
    日逆孝介 No.529
    これだけビビってたら楽しいよねww
    2017-01-09 13:15 
    tomi No.528
    ヴェルドさんの心の叫びにフフッってなったw
    Comment form

    Trackback

    Trackback URL