鎖錠の楼閣

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    【かたことワンコとしがないご主人】第2話【風ノ音鳥】※自作動画付き

    ■タイトル
    かたことワンコとしがないご主人

    ■あらすじ
    魔王が棲みついていると噂の【不帰の森】に記憶の無い少女が迷い込んだ。※※youtubeで配信している自作動画をノベライズした作品になります。

    ■キーワード
    ファンタジー サウンドノベル

    ■第2話


    ◆第2話【風ノ音鳥】


     戦わないと言う選択は単なる逃避とは違う。
     世界を震かんさせた“魔王”が棲みつく呪われた領地、【不帰の森】。
     人族は無論の事、亜人族や魔族ですら立ち入らない未踏の地に、一人の少女が迷い込んだ。
     辿れる記憶は無く、存在する理由も不明。少女は、ただそこにいた。
     禁忌の森に住まう“私”は思う。きっと少女は、帰るべき記憶が有り、ここにいる理由が有る筈だと。
     少女は言った。“一緒に探して”と。
     先に記しておくが、“私”は恐らくこの先、少女の記憶を、少女の理由を、探しはしないだろう。
     これは予見だが、“私”は少女の記憶を知っているし、少女の理由を認めている。
     だからきっと、少女が見つけるまで、“私”は見ているだけだろう。
     観てはいない、見ているだけだ。
     いつもの夜が明ける。いつもの世界に、一人の少女が混ざり込む。

    ◇◆◇◆◇

     禁忌の森の只中に、二人分の寝息が流れていた。
    「……」
    「……」
    「……もそり」
     少女――ワンコは目を覚ますと、隣に青年が寝転んでいるのを確認して、小さく瞬きを繰り返した。
    「……」
     青年が目を覚ます様子は無い。すぅすぅと小さな寝息を立てたまま、動かない。
     木漏れ日の射す森は、考えるまでも無く既に夜明けを迎えている。ワンコはそっと青年――ミジャヤの肩に手を置いた。
    「ミジャヤ」
     小さく声を掛けながら、微かに彼の体を揺さ振る。
     青年はそんなちょっとした呼びかけに応じるように、ゆっくりと上体を起こした。
    「……うん?」
    「ミジャヤ、おはよう」
     ミジャヤの瞳を覗き込むように挨拶をするワンコに、ミジャヤは欠伸交じりに微笑を浮かべる。
    「むにゃ……おはうよ」
    「おはうよ?」
    「おはうよ、ワンコ」
    「おはうよって何だ?」
     ワンコの不思議そうな問いかけに、今更気づいたようにミジャヤは「あぁごめん、おはようだね、おはよう」とと言い繕う。
    「おはよう。おはうよって何だ?」
    “誤魔化すな”と言わんばかりのワンコの鋭い視線に、ミジャヤは苦笑を浮かべてしまう。
    「……えーと、私なりの朝の挨拶、だよ?」
    「そうか。おはうよ、ミジャヤ」
    「改まって言われると何だか恥ずかしいなぁ」思わず頬をポリポリと掻いてしまうミジャヤ。
    「おはうよ、ミジャヤ」
    「お、おはうよ、ワンコ」
     最早たじたじのミジャヤだった。

    ◇◆◇◆◇

    「はい、朝ご飯」
     そう言ってミジャヤが差し出したのは、昨日も見た細いネギのような草だ。
    「おいし草か」怪訝な表情を見せるワンコ。
    「そうそう。美味しいから毎食これでもいいくらいだよね~」満面の笑みを浮かべるミジャヤ。
    「しょっぱい。体に良くない」
    「体に良くないものは総じて美味しいものさ」
    「ミジャヤは食べちゃだめ」
    「えっ」
    「だめ」鋭い眼光で宣言するワンコ。
    「でもお腹空いちゃうよ?」困った風に小首を傾げるミジャヤ。
    「……だめ」眉間に皺が寄るワンコ。
    「食べなかったら元気が出ないよ?」畳みかけるように詰め寄るミジャヤ。
    「…………だめ」眉間の皺が更に深くなるワンコ。
    「二人で食べるときっと楽しいよ?」ニコッと笑いかけるミジャヤ。
    「……ずるい」膨れっ面でミジャヤを見やるワンコ。
    「ふふふ。さ、朝ご飯にしようか」
    「……ずるい」
     勝ち誇ったような顔でおいし草を食べ始めるミジャヤに、ワンコも渋々とだが引き下がるのだった。

    ◇◆◇◆◇

    「一晩経ったけど、何か思い出せそう?」
     朝ご飯を食べ終えた二人は、その場に座り込んだまま、ぼんやりと互いの姿を見つめていた。
    「わからない」
    「そっかぁ。焦っても仕方ないし、のんびり思い出せばいいよ」
    「探して」
     欺瞞を見逃さないかのような鋭い視線を投げかけるワンコに、ミジャヤは一瞬言葉を呑み込む。
    「……そうだったね、私も頑張るって言ったもんね」小さく溜め息を零し、ミジャヤは空を仰いだ。「ただ、残念な事に、私はこの森の外の事に就いては詳しくないんだ」ワンコに視線を戻し、人差し指を立てる。「こういう時は外の事情に詳しい相手に聞くのが一番だと思う」
    「誰?」小首を傾げるワンコ。
    「私の古い友達なんだけど、ちょっと声を掛けてみるよ。えーと、これだこれだ」
     と言ってミジャヤが衣服の下から取り出したのは、水色の毛並みの小鳥。
    「なにそれ?」
    「これは“風ノ音鳥”と言って、念じた言葉を相手に届けてくれる鳥なんだ」水色の小鳥――風ノ音鳥の頭を撫でながら、ワンコを見やるミジャヤ。「外の世界でも使われている筈なんだけど、知らない?」
    「知らない」フルフルと小さく首を振るワンコ。
    「そっかぁ。使わない人は全く使わないって言うし、そんなものかもね」苦笑を浮かべてコックリ頷くミジャヤ。「ちょっと待ってね、今伝える言葉を考えるから」と言うと暫しの沈黙を置き、「……よし、じゃあ行っておいで」と言って風ノ音鳥を放った。
     バタバタバタバタ――――と羽ばたいていく風ノ音鳥を見送ると、ミジャヤはワンコに向き直った。
    「後は風ノ音鳥が帰ってくるまで、のんびり歩こうか」
    「待たなくていいのか?」
    「ただ待ってるだけって言うのは耐えられなくてね。それに、風ノ音鳥は相手に直接届くから、ここでジッとしていなくてもいいんだよ」
    「便利」
    「便利だねぇ。それが嫌って言う人もいるみたいだけど」
    「どうして?」不思議そうに小首を傾げるワンコ。
    「縛られてる感じがするんだって。どこにいても声が届くって言うのは、自由じゃないらしい。縛るのも縛られるのも、縛らないのも縛られないのも、それこそ自由だと思うけど」
    「難しい」
    「そうだね、ワンコも、あんまり考え過ぎないようにしたらいいと思うよ。答が無い問題なんて、この世界には有り触れてるから」
    「難しい」
    「小難しい話はやめて、ちょっと歩こうか。のんびりと歩くだけでも、頭の中はスッキリするよ」
     そう言ってミジャヤが歩き出したのを見て、ワンコも後を追うように歩き出す。

    ◇◆◇◆◇

     バタバタバタバタ――――と、風ノ音鳥の羽ばたきが聞こえてきた。
    「帰ってきた」水色の小鳥を指差して呟くワンコ。
    「そうだね、今日は割と早い方かな。よしよし、聞かせてご覧」
     人差し指の上に載った風ノ音鳥は、何も言わない。
    「聞こえない」
    「これは私宛ての風ノ音鳥だから、私にしか聞こえないんだよ」
    「ずるい」再び膨れっ面になるワンコ。
    「ぇえ?」
    「わたしも聞きたい」
    「うーん……あ、じゃあ私からワンコに風ノ音鳥を飛ばすよ。それでいいかな?」微笑みかけるミジャヤ。
    「どうなる?」小首を傾げるワンコ。
    「私の声が聞けるよ」
    「聞きたい」
    「おけー、じゃあまずは風ノ音鳥を印さなくちゃね」
    「印す?」ことっと小首を傾げるワンコ。
    「うん、風ノ音鳥は印した相手、場所にしか飛ばせないんだ。方法は簡単、風ノ音鳥に手を添えて、印す人や場所の名前を言えばいい」
     ミジャヤの人差し指に留まっている水色の小鳥に触れ、ワンコは呟いた。
    「……ワンコ。……これでいい?」
    「うん、これで印せたから、いつでもワンコに風ノ音鳥を飛ばせるよ」コックリ頷くミジャヤ。「じゃあ……、……よし、行っておいで」
     パタパタ、と小さく羽ばたいてワンコの前を浮遊し始める風ノ音鳥。
    「来た」
    「指を出せば留まってくれるよ」
     言われた通り、人差し指を立てると、その上に着地する風ノ音鳥。
    「留まった」ミジャヤの顔を見やるワンコ。
    「風ノ音鳥を見て、“聞かせて”って声を掛けてみて」
    「聞かせて」風ノ音鳥を見て呟くワンコ。
    『やぁやぁ、私です、ミジャヤです。近い内に逢う友達はちょっと変わってるけど、悪い人じゃないから安心してね』
     不思議な反響を伴ったミジャヤの声が、頭の中に直接流れてくる。
    「聞けたかな?」
    「返事したい」ミジャヤを見やって呟くワンコ。
    「お、じゃあ風ノ音鳥に念を送るんだ。心の中で、始まり、と考えてから、終わり、と考えるまでの言葉を吹き込めるよ」
    「分かった」コックリ頷くと、数瞬の沈黙を置いた後、「できた」とミジャヤに視線を送るワンコ。
    「そしたら、“行け”って言えば、相手に向かって飛んで行くよ」
    「行け」
     ワンコの声に応じるように、風ノ音鳥はパタパタとミジャヤに向かって飛んでいく。
     ミジャヤが人差し指を立てると、その上に軽やかに着地する風ノ音鳥。
    「よしよし、じゃあ聞かせてご覧」
    『ワンコです。ミジャヤといると安心します。友達もミジャヤといると平気です。だから大丈夫です』
    「聞けた?」瞳が輝いているように見えるワンコ。
    「バッチリだよ! そして何だかほっこりした!」サムズアップして頷くミジャヤ。
    「ほっこり?」不思議そうに小首を傾げるワンコ。
    「嬉しいって事さ!」
    「わたしも、ほっこり」
    「えへへ、よかたー。そんな訳だから、私の友達と逢うのはまだ先だけど、いつか逢えると思うから、楽しみにしててね」
    「うん」
     ワンコの返事に、ミジャヤは満足そうな笑みを返した。

    ◆第2話~おしまい~
    【後書】
     ふとようつべの動画を見直してたら「そう言えばこんな作品作ってたな~」と懐かしさを覚えたと同時に続きが作りたくなったので、本日9時間ほど掛けて第2話を作成&投稿致しました!
     1年以上昔に第2話の文章が出来上がっていたので、後はそれを組み込んでいくだけと言う状態で1年半近くも放置してたみたいです。いやーもっと早く思い出したかったネー(よそ見)。
     タイトルにもなってるワードは、わたくしの作品を網羅している人にとっては「あれ?」と思うモノになっていると思います。後々の展開を読めば更に「これあれじゃねーかw」と思う事になると思いますが、そういう事です(笑顔)。
     第3話こそ、1年以上待たせる事無く更新できたらいいなーと思っております。取り敢えず私ゃ満足したよ……w
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