鎖錠の楼閣

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    【戦戯】EX03.聖なる夜にサンタさんが惨たらしい目に遭うお話【オリジナル小説】

    ■タイトル
    戦戯

    ■あらすじ
    遠い未来。戦争が当たり前のように行われる荒廃した世界で、或る男に一本の電話が入る。「君にゲームをして貰いたいんだ」……それが悪夢の始まりだった。――ひょんな事からチームを組んだ四人の男女の、狂れたゲームの物語。

    ▼この作品はブログ【鎖錠の楼閣】、【小説家になろう】(http://ncode.syosetu.com/n3582cz/)、【ハーメルン】(http://novel.syosetu.org/73083/)、サークルサイト【風雅の戯賊領】(http://huuganogizoku.web.fc2.com/)、【カクヨム】(https://kakuyomu.jp/works/1177354054881703366)の五ヶ所で多重投稿されております。

    ▼再投稿作品になります。

    ■キーワード
    R15 残酷な描写あり 戦争 ライト 銃撃戦 再投稿

    ■第23話

     EX03.聖なる夜にサンタさんが惨たらしい目に遭うお話


    「やぁ皆! サンタさんじゃよ! 皆元気にしとったかな? ワシね、ワシね、去年で良い子には懲りたんじゃよ。うん、アレだよね、良い子ってレヴェルの子、殆どいなかったもんね! 今年からシフトチェンジして貰って、良い子じゃない子にプレゼント配る事になったんじゃよ!“良い子じゃない”って所がポイントじゃ! もうそれサンタさんがプレゼントを配る意味無くね!? って思うじゃろ? ところがぎっちょん! サンタさんは博愛主義の懐超広大系足長おじさんじゃからね、そういうヤサグレ不良系なお子様にもプレゼントを配るスーパー素敵なアクション起こしちゃうんじゃよ。そんな訳で早速ね、プレゼントをね、配りに来たんじゃよ。そういう訳なの。判って貰えたかなぁ?」
     ヴェルドにショットガン――アネモスの銃口をこめかみに押し当てられたまま、真っ青な顔で涙を滂沱と流しながら、サンタは震えない声で懸命に伝えた。
    「……榊と似たような症状の人間ですか。作戦の妨害にしては、斬新な手段で来ましたね」全くアネモスの銃口を下ろそうとしないヴェルド。「雇い主の名を教えて下さい。十秒だけ待ちます」
    「サンタさんに雇い主なんかおらんよ!! お願い邪魔するつもりなんて無かったの!! どうしてもと言うならワシ帰るよ!? ごめんやっぱり帰らせて!! 死にたくない!! 死にたくないのぉ!!」必死に泣き喚くサンタ。
    「何の情報も得られないまま、生かして帰すと思いますか?」無表情で引鉄を絞ろうとするヴェルド。
    「ワシ死ぬの!? サンタさんなのに銃殺されちゃうの!? やめてやめてほんとやめてワシ死にたくないワシ良い子、じゃなかった良い子じゃない子に夢を届けるまで死ねないのお願いだから銃口下ろしてよぉぉぉぉおおおおッッ!!」
     ズドンッ、とサンタの足が吹き飛んだ。
    「ッッ!! ッッ!!」言葉を失うサンタ。
    「これで喋り易くなりましたか? 雇い主は誰ですか? 次は頭を撃ち抜きます」
     まじヤヴァいどう足掻いてもワシ死ぬわこれ――フル回転したサンタの頭はそこで擦り切れ、ガクガクと震えながら、舌を縺れさせながら、言った。
    「あ、あば、あばばば、ば、う、う、うわぁぁぁぁああああッッ!!」
     凄まじい勢いで立ち上がると、サンタは白い袋の中から現金を取り出し、ヴェルドの顔に叩きつけた。
     ぽとり、と現金の束が雪の上に落ちると、同時にサンタの体は散弾と共に吹き飛び、動かなくなった。
     ヴェルドは何事も無かったかのような振る舞いで走り出し、サンタの死体はやがて風化して消えていった。

    ◇◆◇◆◇

    「信じられないよあの戦闘マシーン! 普通あのタイミングで撃つ!? 否! 撃たない!!」
     無事に復活を果たしたサンタは汗をダラダラ流しながら、次なる良い子じゃない子のいる場所へ向かっていた。
    「何だってあんな子にプレゼントを配る必要が有ったの!? 併も欲しいプレゼントが現金ってどんだけだよ!! 夢なんて微塵も無いよ!! 現実的過ぎるよ!! てかこれもうアレだ、もう次の子も全然信用ならない! 今年もワシの阿鼻叫喚で終わる気しかしない!!」
     そうこうしてる内に辿り着いたのは、ホテルだった。その一室に良い子じゃない子がプレゼントを待っているらしい。
     サンタは迷いなく進むと、部屋の前に立ち、コッソリ扉を開ける。鍵は掛かっていない。中を覗き見ると、奥の方からカチャカチャと何かが操作されている音が聞こえてくる。
    (ハハーン、これはゲーム機のコントローラーの音じゃな。あれ、もしかして初めて子供なんじゃ……!?)
     喜び勇んで目的の部屋に辿り着くと、少女――ではない、成年の女が薄暗い部屋でヘッドフォンを付けてモニターに喰いついていた。
    「……」
     名状し難い表情を浮かべて、「まぁそんな気はしとったけども……」と遠い目をした後、プレゼントを白い袋から取り出そうとして、やたら長いモノが出てきた。
     長い。ひたすら長い刀剣。袋の容量では収まりきらない極長の刀。それを思わず落としてしまったサンタに、女――マーシャはピクリと肩を震わせてこちらに振り返った。
     大きな瞳がサンタを捉え、極長の刀にスライドする。途端、その瞳が輝きに満ち溢れた。
    「ハラショーっ! まさか本当に物干し竿が貰えるナンテ! サンタサン、どうもどうもデスヨーっ!」
     と言ってサンタの手を取り、グルグル回り始めるマーシャ。サンタは目を回しながら「ど、どういたしまし、て……うぷ……」吐きそうになった。
    「……おえぇ……てか、それ、物干し竿じゃないぞ……刀じゃん……」真っ青な顔で訂正するサンタ。
    「ノー! サンタサン、まさかプレゼントしておきながら知らないのデスカー!? これはかの有名なアサシン、ササキコジローが愛用していた物干し竿じゃないデスカー! 実物はこんなに長かったのデスネー……」しみじみと刀――物干し竿を撫で回すマーシャ。
    「何かよく解らんが、喜んで貰えたようで何よりじゃ……」ホロリと涙を零しそうになるサンタ。「一瞬ドキッとしたけど、良い子じゃん……この子、スーパー良い子じゃん……」
    「ちょっと試し斬りさせて下サーイ!」

    ◇◆◇◆◇

    「良い子じゃなかったッ!! 全ッ然良い子じゃなかったッッ!! いきなりバッサリいかれた!! 信じられないッ!! 狂気の沙汰だよ!! ワシの良い子がこんなに猟奇的な訳が無いッッ!!」
     発狂寸前で新たな良い子じゃない子のいるホテルに辿り着くサンタ。その顔は最早名状し難い色に変わっていた。
    「おかしい……おかしいよこんなの絶対! 良い子でも良い子じゃなくても何でこんな散々な目に遭わないといけないの!? これならまだ良い子の方がマシだったよ!! ワシが何したって言うの!? ワシ悪くないよね!?」
    「なに人んちの前でゴチャゴチャ言うとんねん」
     扉を開けてサンタを見据える学者然とした青年――刃蒼は、怪訝な面持ちで更に言葉を連ねた。
    「救急車呼んだ方がええか? それとも民警?」言いながら携帯端末を掲げる刃蒼。
    「待ってお願いワシの話を聞いて!! ワシ、サンタさんなの!! 君にクリスマスプレゼント届けに来たんじゃよ!!」
     間。
    「……お、おう。そか。サンタさんか」戸惑いを隠せない様子の刃蒼。
    「あ、う、うん。それで、あの、プレゼント、配ってもいい……?」同調するようにぎこちない様子のサンタ。
    「ええけど、何くれるん? あと僕今めっちゃ忙しいねんけど。アニメの一挙放送観とんねん」
    「ご、ごめんね? ちょっとだけ待ってね?」いそいそと白い袋からプレゼントを取り出す。「はい、これじゃよ!」
     刃蒼は最新の薄型携帯端末を受け取り、「おー! これめっちゃ欲しかった奴やん! ありがとな!」と朗らかに笑った後、「ほなな!」と扉が閉められた。
     空風が吹き荒び、中から愉しげなアニメの音楽が聞こえてくるだけの、寒々しい玄関で、サンタは仏のような顔のまま立ち去った。

    ◇◆◇◆◇

    「……うん、良い子……では、あったかな、うん。でも何かこう……違くね? 何かこう……ワシの求めとる子とは、違くね? 確かに喜んではいたけどね? でも何かこう……違くね?」
     悶々と悩みながらまた別の良い子ではない子の部屋の前に辿り着くサンタ。そっと扉を開けると、中にいた少年――臥堂がビクリと驚いてこちらに気づき、「だ、誰だテメエ!?」とハンドガン――アサドを構えて威嚇してきた。
    「お、落ち着いて下さーい!? ワシアレ、アレじゃよ! サンタさんじゃよ!! だから撃たないで撃たな――」銃声が轟いた。「う、うわぁーっ!!」
     扉を閉めても銃声が轟き続け、更に扉が開いて「待ちやがれテメエ!!」と銃声が追ってきた。サンタは死に物狂いで逃げ延び、公園に辿り着いた。
    「がは、はぁ、はぁ……あぁ、な、何なのこの世界……!? 不審者観たら即発砲なの!? 警告してなかったよね!? 確かに不法侵入しようとしたワシも悪いだろうけど、絶対に威嚇じゃないよねアレ!? 本気で殺しに掛かってたよね!?」
     ぜぃぜぃと息を切らして公園のベンチに座り込むサンタ。ふと、先刻の少年――臥堂に渡すべきプレゼントを渡し損ねていた事に気づいた。
    「うわぁ……どうしよう……怒られるかなぁ……でももう無理じゃよ……あの子確実にワシの命狙ってきとるし……」白い袋を漁りながら呟きを漏らすサンタ。「あの子の欲しがってたプレゼントって何じゃったんじゃろ……」
     拳銃だった。
    「……」爽やかな笑顔を浮かべ、そっと白い袋に戻すサンタ。「観なかった事にしよう。ワシは何も観なかった。いいね?」
    「あ、いやがった!!」駆け込んできた臥堂がアサドを構える。「逃げんじゃねえよ強盗がァ!!」再び襲い掛かる銃声の雨。
    「う、うわぁーッ!! ワシ強盗じゃないよーッ!? ワシ善良なサンタさんじゃよーッ!?」周囲一帯に弾丸の嵐が吹き荒び、恐慌状態に陥りながらも逃げまくるサンタ。「てか強盗殺す気満々だよねあんた!? 寧ろ何でここまで追い駆け回して殺そうとするの!? 通報の方がよっぽどマシだよ!!」
     そうしてサンタは町中駆け回ったのだった。

    ◇◆◇◆◇

    「ぜひーッ、ぜひーッ、ぜひゅーッ、が、はぁ、あぁ、かっは、あぁ……と、年甲斐も無く全力疾走させるんじゃないよ……寿命がガッツリ縮んだわい……もう死ぬ、もー死ぬぞワシ……いっそ殺してくれ……」
     全身汗だくで湯気が立ち上っているサンタ。走り逃げながらも次なる良い子じゃない子の家に辿り着いていた。
     またホテルだった。
    「……なにこれ、この世界の良い子じゃない子って、皆ホテル住まいなのか……? 貧困なのか裕福なのかよく解らんのぉ……と、とにかくあともう少しじゃ、早く終わらせてとっととサンタの世界に帰ろう……ワシもう二度とこの世界に来ないぞ……」
     ブツブツと呟きながらホテルの一室に辿り着く。今度は不法侵入者と間違われないように、コンコンと控えめにノックする。
    「こんばんはー、サンタさんじゃよー」
     かなり間の抜けた呼びかけだが、もう四の五の言っていられなかった。問答無用で銃撃されたら敵わない。既に一度殺されてしまったのだ、もう二度とあんな目に遭いたくない。
     反応を待っていると、あっさり扉が開き、赤髪の女性――月が出迎えた。
    「ようこそサンタ様。八恵様がお待ちです」
    「え? ワシを待ってた……?」
     こんな待遇初めてだった。恐る恐る部屋に入ると、肘掛け椅子に腰掛けたポニーテールの女性――鮎川が妖艶な表情を浮かべてサンタを迎えた。
    「わぁー、本当にサンタさんねぇ。ようこそ、サンタさん、わたしは鮎川八恵。宜しくね♪」
    「……? わ、ワシはサンタじゃ、宜しくのう」
     まさかこんな風に出迎えられるとは思わず、必要以上に狼狽えてしまうサンタ。そんなサンタを見やり、鮎川はゆっくりと上体を屈めて真剣な表情を作った。
    「さて、サンタさん。早速――商談に移りましょうか」
    「…………は?」呆気に取られるサンタ。
    「あら、違うの? それじゃあ何の契約かしら? 手付金次第では、この国の軍用機のワンランク上の兵器を用意できる準備が有るわよ?」
    「なになに何の話ですか!? ワシそんな恐ろしい話をしに来たんじゃないぞ!? サンタさんじゃよワシ!? サンタさんが配るモノって知らんの!?」思わずツッコミを入れるサンタ。
    「――なるほど、絨毯爆撃を所望のようね。月さん、爆撃機の用意を」パチンっと指を慣らす鮎川に、月が「畏まりました」と恭しく首肯し、携帯端末を手に取り始める。
    「待って!? そんなの望んでないよワシ!? 何でサンタさんがクリスマスに爆撃の嵐をプレゼントせにゃならんの!? 君に!! 君にプレゼントを配りに来たんじゃよ!!」必死に説明するサンタ。
    「――月さん、どうやら彼、話が通じないみたい。ちょっと懲らしめてやりましょ?」「畏まりました」「どうしてそうなるんじゃああああッッ!!」
     ボコボコにされたサンタさんが必死に説明しました。
    「――わぁー! そうそうこれこれ、このアイスが欲しかったのよねぇ~♪ ゴディーバのアイス! これ売り切れ続出で月さんセンサーでも引っかからなかったのよ~♪ 有り難うサンタさん!」アイスを頬張ってご満悦の鮎川。
    「……い、いいんじゃよ、判って貰えれば……」腫れ上がった顔のまま涙を流すサンタ。
    「八恵様、この方の処遇はどうなさいますか?」ボコボコにされたサンタを示す月。
    「そうねぇ、悪い人じゃなさそうだし、生かしておきましょうか」
    「畏まりました」
    「……」

    ◇◆◇◆◇

    「……」
     松葉杖を突いてヨタヨタと歩くサンタ。
    「おか……おかし……おかしいよ……絶対こんなの間違ってる……ワシの……サンタさんとしてのプライドが完膚なきまでに破壊されとるんじゃが……」
     グスグスと泣きながら目的地へ進むサンタ。
     辿り着いたのは、民警本部だった。
    「……ここ? 民警って事は、警察……? 警察なら悪い事されんじゃろう……! やった……! ワシ、勝った……!」
     ヨタヨタヨタヨタと駆け足に民警の入り口に飛び込むと、中にいた人間全員に銃口を向けられ、「動くなッ!! ゆっくりと膝を突いて両手を頭の上に!!」と怒鳴られた。
    「わ、ワシ怪しくないよ!? サンタさんじゃよ!? 皆大好きサンタさん――」「黙れッ!! 膝を突いて両手を頭の上に!! 怪しい真似をするな!! これは警告だ!! さもなくば銃撃も辞さない!!」
     サンタは逮捕された。
    「うぐっ……まさかサンタさんが逮捕されるなんて……ぐすっ……最悪じゃ……最悪通り越して災厄じゃ……えぐっ……何なん……これ何なん……ひぐっ……」独房でシトシト泣き始めた。
    「彼がサンタと名乗る老爺か」
     独房の扉が開き、顔に火傷の痕が有る女――影狼が入ってきた。
    「あ、あんたじゃ! あんたにプレゼントが有るんじゃよ!!」思わず飛び掛かりそうになるサンタ。
    「下がってください隊長!! 危険です!!」部下らしき男が庇うように立つ。
    「大丈夫だ、下がっていろ」そっと部下を宥め、影狼はサンタに向き直った。「私にプレゼント、だと?」
    「そうじゃ! あんた、これを欲しがっておったじゃろ!?」
     そう言ってサンタが取り出したのは、映画のチケットだった。最近流行りのアニメの劇場版のチケットだった。
    「……!」瞠目し、わなわなとし始める影狼。
    「馬鹿を言うな!! 隊長がそんな俗物を観る訳無いだろう!!」部下が怒鳴り散らした。「下賤な爺め……ッ!! 隊長を嘲弄するとはいい度胸だ、今すぐ殺してやる!!」
    「うぇええ!? そ、そんな馬鹿な!? ワシはその子が望んどるモノしか取り出せんのじゃよ!? その子が望まない限り、このプレゼントは出現せん訳で……!」
    「何を訳の判らない事を言っている!! 隊長!! この爺、何らかの薬物をやってる可能性が有ります!! 尋問を始めましょう!!」
    「う、うむ、そ、そうだな」ソワソワとサンタの手にあるチケットに視線をやったり逸らしたりする影狼。「だ、だがしかし、ちょっと話を……」
    「隊長は映画なんか観ないんだよ!! 俺達のためにどれだけ血と汗を流してきたと思ってるんだ!! いつだって俺達の事を考えて行動してくれる隊長がッ!! そんな下らないモノを観てる暇なんざねえんだよッッ!!」大声で怒鳴り散らす部下の男。
    「嘘じゃ!! 絶対に嘘じゃ!! ワシのプレゼント袋が嘘を吐く訳が……っ!!」
    「隊長!! もう猶予は有りません!! こいつを尋問してきます!!」
    「あ、う、うむ、そ、そうだな。……あ、いや、やっぱり私が……」微妙に狼狽えている影狼。
    「隊長はどうか休んでて下さい」優しげな表情で部下が影狼を見据える。「隊長はいつだって俺達の事を最優先に考えてくれてるんです。今日ぐらい……クリスマスぐらい、ゆっくりして下さい。俺達には、それ位の事しかできませんから……」
    「……そ、そうか」とても不服そうに、歯切れ悪く応じる影狼。「で、では頼んだ……」
    「そんなぁ!? ワシどうなるの!? ちょっと!! ねぇ!? ワシの話を聞いて!? お願いじゃからぁぁぁぁああああッッ!!」引き摺られていくサンタ。
    「お前の話は後で俺がたっぷり聞いてやるから黙ってろ!! ほら、キリキリ歩け!!」
    「う、うわぁぁぁぁああああッッ!!」
     サンタの絶叫が響き渡った。

    ◇◆◇◆◇

    「おかしい……ワシは一体何を間違えたんじゃ……どこから道を踏み外してしまったんじゃ……」
     ズタボロの服でトボトボと歩くサンタ。全身に創痕が穿たれ、血塗れである。周囲の人間が奇異の眼差しでサンタを見やる中、彼は構わず目的地に向かって歩き続ける。
     目的地――それは町外れにある廃寺だった。浮浪者やならず者がささやかなパーティを開いている中を、グッタリした様子で進んで行く。恰好が恰好だけに、周囲の誰もが気にする様子も無く歓談を続けている。
     やがて廃寺の奥まった場所に在る墓地の一角で、目的の人物を見つけた。
    「……ここは仏地ですよ。異教徒は疾く去りなさい」
     坊主――榊が冷然とした表情で告げるも、サンタはもうどうなってもいいと言わんばかりに突き進んでいく。
    「君にクリスマスプレゼントが有るんじゃ。受け取って欲しい……」
    「異教徒の習わしに浴す訳には参りません。疾く去りなさい」
    「君が欲しがっていた物じゃ。受け取ってはくれんか……?」
    「拙僧が求道せしは済度の道、唯一つです。貴方に示されずとも、拙僧の道は迷わず一つ」
    「木魚、欲しくないのかい……?」
     言いながら木魚を掲げてみせるサンタに、榊の眉根が微かに動いた。
    「……お布施とあらば、納受せねばなりますまい」スッと両手を差し出す榊。
    「受け取って、くれるんじゃな……?」ぱぁーっと明るくなるサンタ。
    「異教徒の施しなど本来受け付けません。併し、拙僧が納受を軽断する事は、井底の蛙に対し悟得への道を拒止すると同義。止むを得ずです」木魚を見据えて心なしかウズウズしている様子の榊。
    「それじゃあ、はい、クリスマスプレゼントじゃ」
     木魚を受け取った榊は、「確かに、納受しました」と無表情のまま、微かに笑みを零し、首肯した。
    「初めて……初めて、マトモな子に逢えた気がするぞ……!」思わず涙ぐみ始めるサンタ。「やっと救われた……! ワシ、サンタさんやってて救われたよ……!」
    「――済度を、求道されている方でしたか」
     途端に目つきを変える榊に、サンタは気付かず「やった……! やったよワシ……!」と何度も何度もガッツポーズを取っていた。
    「……なるほど、まさか拙僧への施しが済度への道標とは……迂闊でした」ブツブツと呟いたかと思いきや、利剣を抜き放つ榊。「未見に致しましょう。貴方を済度します」

    ◇◆◇◆◇

    「……」
     全身ズタズタに切り裂かれたサンタの亡骸に等しい物体が、ゴミ捨て場に放置されていた。雪が降り始め、サンタの真っ赤な体が少しずつ白く溶けていく。
    「……ワシ、サンタ辞めようかな……」
     つぅ、と涙が筋を作って頬を垂れていく。
     何が悲しくて聖なる夜に射殺されたり、試し斬りされたり、あしらわれたり、追い回されたり、ボコボコに痛めつけられたり、逮捕されたり、斬殺されたりしなければならないのか。
     どう考えてもサンタへの仕打ちではない。こんな事になるなら、初めからサンタになどならなければ良かったと、サンタは本気で悔いていた。
     あと一人だけプレゼントする相手を残していたが、もうこのままサンタの世界に帰りたいと、ぼんやり夜空を眺めていたサンタだったが、不意に自分に影が差した事に気づいた。
    「おやおや? お客様、こんな所で如何為さいましたか? サンタにしては、途轍もなく血腥いですが」
     ピエロの面を被った、不思議な女――クラウン。彼女こそがクリスマスプレゼントを配る相手――良い子ではない子のラストだった。
    「あぁ……君に、クリスマスプレゼントが有るんじゃ……」掠れそうな声で、サンタは呟いた。
    「なんと! こんな道化であるわたくしにプレゼントが有ると!? 嬉しいですねぇ、心躍りますねぇ、年甲斐も無くワクワクしちゃいますねぇ! 併しわたくし、プレゼントなど望んでいないのですが、一体何を頂けるのでしょうか?」
     愉しげにサンタの周りをウロウロしながら大袈裟な仕草をして喋り続けるクラウンに、サンタは息も切れ切れに白い袋の中からプレゼントを取り出した。
     一着の、サンタ服だった。
    「これが……君へのプレゼント……?」サンタ自身、理解に苦しんでいる様子だった。
    「――なるほど! わたくしにサンタと言う“お仕事”をプレゼントして頂けるのですね!? なるほど、なるほど。お客様、判っているではありませんか。――そうです、わたくしはお仕事を求めて欲して探しておりました! 後はお任せ下さい、お客様の代わりにサンタとしてのお仕事、充分に全うして参りますよ! さぁ! まずは誰にプレゼントを配れば宜しいでしょうか!?」
     仮面をサンタの顔面すれすれまで近づけて愉しげに吼えるクラウンに、サンタは意識が遠のく直前に、告げた。
    「…………もう、サンタの仕事は終わっとるよ……」
     ぱぁーっと光の粒になって天に昇って行くサンタの亡骸を眺めるクラウンは、やがて「そうですか、残念です。また来年、愉しみに待っていますよ♪」と陽気なテンポで歩き出して、忽然と姿を消した。
     そうして、一人のサンタが消失し、剣呑なクリスマスは幕を閉じるのだった。

    ◇◆◇◆◇

    「……この大金は貯金に回すか。この金で、守れる命が有るといいんだが……」ヴェルドは現金の束を紅いコートの裏地に納め、表情を改める。「まずは作戦を完遂してから、だな」

    「凄いデスヨー! 物干し竿斬れ味ばつ牛ンデスヨー! アレ? ホテルがいつの間にか解体現場になってるデスヨ?」物干し竿を下ろし、マーシャは廃墟と化したホテル跡地を眺める。「まさかこれは……新手のスタンド攻撃……!? 燃えてきた! 燃えてきたデスヨー!」

    「いやー流石に最新の端末やとブラウザ軽いなー。ゲームもサックサクやん」最新の薄型携帯端末で動画を観始める刃蒼。「ウィルスも入っとる様子は無いし、ホンマにサンタさんやったんかなー。知らんけど」

    「おー、このハンドガン中々いい性能してんじゃん。つーかこれ俺が前々から狙ってた奴じゃねえかよ!」サンタが落として行ったハンドガンを、臥堂はコッソリベルトに手挟む。「こいつは貰っとくぜ? 今度出てきたらこれで撃ち殺してやるか」

    「ん~♪ やっぱりアイスは冬に食べるモノよね~♪ ゴディーバのアイスってのは乙なもんよ~♪」満足そうにアイスを頬張る鮎川。「サンタさんには悪い事しちゃったわね~。今度逢ったら、お礼を考えておかないとね♪」
    「八恵様が満足そうで何よりです」微かに口唇に笑みを見せる月。「お礼に就きましては、こちらで準備を進めておきますので、どうかお気になさらず」

    「――隊長? どこに行かれるのですか?」
    「あぁ、ちょっと出かけてくる。二時間……いや三時間は詰め所を離れるが、警戒は怠るなよ?」
    「了解! お気をつけて!」
    「では、行ってくる」と告げる影狼の頬は、若干にやけていたが、誰も気付かなかった。「大泥棒と名探偵の対決……愉しみだ……!」

    「遂に木魚を賜れました……苦節三十五年……幾度と無く苦行を強いられ、木魚を観る事すら能わなかった拙僧が、遂に……」いつに無く清々しい表情で木魚を撫でる榊。「これで衆愚の済度に注力できると言うモノ。悟得に到らぬ蒙昧な群盲よ、今こそ真理に導かせようぞ」

    「素敵なプレゼントでしたねぇ、次はわたくしめがお客様を愉しませてみせましょう」クラウンの声だけが、夜空に響いていく。「メリークリスマス! 皆様の聖夜が素敵で甘美で清爽でありますように――」

    『ハッピーメリークリスマス』

    「どこがハッピーじゃどこが!!」サンタが天高くで吼えた。
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